29歳で星になった棋士の人生に「近づき、ぶつかっていった」松山ケンイチ
自分がやりたいと思った役なら無理でもアプローチする
自らが望んで得た役。そこには「自分がやりたいと思う気持ちを表現するのは大事なこと。心の中にしまっていても、誰にも気づいてもらえない。たとえ無理だとしてもやりたいと思ったらアプローチしないともったいない」という松山の強い思いがある。 一方で「作品との出会いはタイミング」だとも言う。 「この映画の原作も、ずっと若いころに持っていたんです。でもその時は読んでいなかった。でも20代後半になって、ふと手に取って読んだんです。それもめぐり合わせ。理由は分からないけれど、必要だから目の前に現れたんだと思うんです」
いちいち失敗にヘコんで成功に天狗になる人生はしんどい
縁や出会い、めぐり合わせ……運命論的な発想にも思われるが 「チャップリンの言葉に『人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見れば喜劇である』というのがありますが、本当にそう思うんです。人生全体で見ると物事の捉え方って全然違ってくることってあるじゃないですか。いちいち失敗にヘコんで、成功に天狗になる人生ってしんどいですよね。そんなことで一喜一憂するのではなく、目の前にあることにベストを尽くして一生懸命生きていくしかないでしょ」と持論を展開する。 これまで数々の作品に出演し、実力派俳優として高い評価を得ている松山だが、 「僕がこの映画から受け取ったことは『誰のためでもない自分の人生を大事にしたい』と思うようになったことです。その意味では、過去から自分を決定していくのってすごく陳腐に感じるんです。過去なんてどうでもいい。過去に縛られると変わっていけなくなる。僕は目の前のことに全力を尽くして、どんどん進化していきたいし、変わっていくことに徹していきたいと思います」と前しか見ないと断言する。 「村山さんは29歳で亡くなりましたが、限りある時間の中で、自分の命をどう使っていくかギリギリのところで懸命に生きていたんだと思います。でも、よく考えたら永遠の命なんてないし、誰だっていつどうなるかわからない。その意味では、自分の人生としっかり向き合うきっかけになる映画なんだと思います」と語った松山。 変化を望む彼にとって、本作の経験は、どんな新しい“松山ケンイチ”を生み出すのか……、非常に楽しみだ。 (取材・文:磯部正和) ----------------------- ■松山ケンイチ(まつやま・けんいち) 1985年3月5日生まれ。青森県出身。2002年ドラマ『ごくせん』で俳優デビューを飾ると、翌2003年映画『アカルイミライ』でスクリーンデビュー。その後も『男たちの大和 YAMATO』(05年)や、『デスノート』シリーズ(06年/08年)や『デトロイト・メタル・シティ』(08年)、『GANTZ』(11年)など話題作に多数出演する日本を代表する俳優の一人だ。