「電気自動車は手掛けない矜持をもつアルピナ社のラスト・オーダーはもう間もなく」by 藤野太一 これがBMWアルピナXB7に試乗したモータージャーナリストのホンネだ!!
最後の時は近づきつつあるが、クルマ作りへの熱意はまったく潰えていない!
今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! BMW X7をもとに、内外装、パワートレイン、足回りに至るまで徹底したスペシャル・チューニングが施されたBMWアルピナXB7に乗った渡辺敏史さん、藤野太一さん、小沢コージさんのホンネやいかに? 【写真12枚】小沢コージさんがアルファード・ヴェルファイヤより優れているという7人乗り、BMWアルピナXB7の詳細画像はこちら ◆「紛れもなくアルピナ」渡辺敏史 BMW傘下となる2025年には独自の設計・製造がストップすることになるアルピナ。その最後の時は近づきつつあるが、クルマ作りへの熱意はまったく潰えていないことはXB7に乗るとよくわかる。 そのアッセンブリーはX7と同じ、サウスカロライナの工場(日本仕様の最終仕上げはドイツ・ブッフローエ)で施されるが、静的・動的品質は見事にアルピナのクオリティに準じている。 質量やホイールベースを味方にした、とりわけ乗り心地に長けている銘柄がベースとはいえ、そのライド感は紛れもなくアルピナだ。 低中速域でのたゆたうような動きが高速域に向かうに従ってフォーカスが定まるようにヒタッと落ち着く、その上質な振る舞いは一度知るともう戻れない、そんな背徳心を抱かせる。 低回転域から湧き上がるトルクで小山のような車体を押し出しながら、いつしか繊細に紡がれる600psオーバーのパワーで車体を高速域へと乗せていく、加速の始終の艶やかさも特別なものだ。ベース・モデルからの伸びしろ、変わりしろという面では、今、筆頭に挙げられるアルピナかもしれない。 ◆「まさにアルピナ・マジック」藤野太一 2025年にBMWグループへの商標権の譲渡を控え、新規開発は終わりを迎えつつあるアルピナ。 XB7は、マイチェン後の上下2段に分割された特徴的なヘッドライトを受け継ぐモデルだ。 変わったのは顔つきだけではない。4.4リッターV8エンジンが、N63型から最新世代のS68型へ変更されており、最大トルクの発生回転域が広くなり、また48Vマイルドハイブリッド・システムも追加されている。 動き出しからウルトラ・スムース。補機類などのノイズもなく静粛性の高さもあって、低回転域ではまるで電気自動車で走っているように感じる場面もあった。 アクセレレーターに力を込めると、アルピナ・チューンのV8エンジンらしく精緻さと気持ちよさを味わわせてくれる。 そしてアルピナ独自のサスペンションの仕立てによる、コンフォート・プラス・モードのまったり感は格別。23インチのピレリPゼロで、この乗り味をつくりだす手腕はまさにアルピナ・マジックといえるものだ。 キャブレーターとクランクシャフトを紋章に掲げ、電気自動車は手掛けない矜持をもつアルピナ社のラスト・オーダーはもう間もなくだ。 ◆「世界最良3列車」小沢コージ 大型SUVとミニバン、実は比べるべきではないかもしれない。3列目の広さで言えばトヨタ・アルファードの方が上。価格もスペシャル・チューンドBMWたるアルピナの方が高い。 だが同じ3列シートで7人以上乗れるパーソナルな移動空間として、より本当に優れているのはどちらかというとXB7だと思う。シンプルに移動の質、ドライバーの楽しさという意味で比べものにならない。 BMWの大型SUV、X7を職人集団アルピナが仕立て直したXB7。内外装の設えはもちろん、とにかく乗り心地の良さ、ハンドリングのキモチ良さ、加速の気持ち良さ、すべての官能性能がハンパない。 エンジンの電子制御、燃料噴射や電動パワステのセッティング、シフト・スケジュール、サスやダンパー・セッティングまで含めてアルピナ・オリジナル。 事実、乗り心地のフラットさ、低速から高速までの揺れの無さは信じがたい。巨人の手で押されるような4.4リッターV8ツインターボのトルク感もアクセル操作含めてキモチいい。郷里まで500km往復する人なら間違いなくアルヴェルよりコッチだ! 写真=神村 聖 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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