ファーウェイの自動車部門「分離独立」で目指す先 スマートカー向け「巨大部品メーカー」が誕生か
中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が、同社の自動車関連事業部門を本体から分離・独立させる準備を整え、2025年初めから別会社として本格始動させることがわかった。 【写真】ファーウェイが奇瑞汽車と共同開発したSUV「智界R7」のスマートコクピット 財新記者の取材に応じた2人の関係者の証言によれば、ファーウェイの「インテリジェント・オートモーティブ・ソリューション・ビジネスユニット(スマートカーBU)」の事業資産と従業員を別会社の「引望智能技術」に引き継ぐ手続きがまもなく完了し、年明けから独立経営に移行する。
ファーウェイは自動車関連事業に2019年に参入した際、「完成車メーカーにはならない」と宣言。自動運転システムなどクルマのスマート化に強みを持つ新時代の部品サプライヤーを目指す戦略を打ち出した。 ■自動車メーカーから出資募る その後、同社の自動車関連事業は紆余曲折を経つつも完成車メーカーのパートナーを増やし、2023年11月には「鴻蒙智行(HIMA)」と呼ぶアライアンスを発足させた。鴻蒙智行には現時点で4社の完成車メーカーが参加しており、新型車の設計段階から販売、マーケティングまでファーウェイが主導している。
鴻蒙智行の立ち上げとほぼ同時に、ファーウェイはスマートカーBUを分離独立させ、完成車メーカーから広く出資を募る計画を発表。その受け皿となる新会社の引望智能技術を2024年1月に設立した。 「引望智能技術の分離独立は、ファーウェイが完成車メーカーにならないという原則をより強く示すことにつながる。わが社は引望智能技術の株主の多様化を図るとともに、その独立経営を支えていく」 ファーウェイの輪番董事長(訳注:交代制の会長職。任期は6カ月)を務める徐直軍氏は2024年9月、メディアの取材に対してそう述べた。
引望智能技術への資本参加を真っ先に表明したのは、国有自動車大手の長安汽車だった。同社は傘下の高級EVメーカー、阿維塔科技(アバター・テクノロジー)を通じて115億元(約2410億円)を出資し、引望智能技術の株式の10%を取得した。 ファーウェイ主導の新型車開発で最初のパートナーとなった民営中堅メーカーの賽力斯集団(セレス)も、長安汽車と同額の出資に踏み切った。 賽力斯集団が開示した資料によれば、(出資時点の)引望智能技術の企業評価額は1152億6000万元(約2兆4154億円)に上る。その裏付けとなるファーウェイの自動車関連事業の純損益は、2023年は55億9700万元(約1173億円)の赤字だったが、2024年上半期(1~6月)には22億3000万元(約467億円)の黒字に転換した。