脱純血主義へ日生がキャリア採用強化-半年で70人、出戻りも歓迎
(ブルームバーグ): 日本生命保険がキャリア採用を強化している。経営を担う中核人材と期待される総合職を対象に昨秋から本格的な中途採用に乗り出し、今月までに約70人の採用を決めた。一度退社した社員の再入社も呼び掛けるなど、収益の多角化に向けた即戦力の人材確保に取り組んでいる。
人材開発部の部長を務めた高木寛和氏(現川越支社長)がブルームバーグとのインタビューで述べた。昨年10月にキャリア採用を専門に担うチームを設置。海外事業や会計、ヘルスケアなど幅広い部門・領域で採用を行った。キャリア採用数は過去5年間、資産運用など特定の専門領域で累計約30人にとどまっていた。
日生は総合職を含む約2万人の内勤職員を抱えるが、新卒から社員を育てる「純血主義」の傾向が強かった。キャリア採用の強化に乗り出した背景には、国内の人口減少で生保事業の環境が厳しさを増す中、非保険分野への事業拡大の動きがある。
同社は昨年11月、介護最大手のニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングス(HD)を約2100億円で買収すると発表。2024年度からの3年間の新中期経営計画では、米国など先進国を中心とした生命保険会社や資産運用会社への大型投資で海外事業の規模拡大を目指している。経験者採用など人材基盤の強化に取り組む方針も盛り込んだ。
高木氏は「ビジネスを多角化する中、活躍している皆さんの力を借りたい」と説明。中途採用した約70人は4月に入社予定の大卒新入社員(総合職)の4割に相当し、そのうち25人が既に入社した。今後もキャリア採用は拡大する方針だ。
S&Pグローバル・レーティングで保険業界を担当する向山健太郎アナリストは、日生をはじめ伝統的な保険会社は新卒採用を重視してきたが、「社内人材では賄えない専門性を持った多様な人材が求められている」と指摘。今後もこうした中途採用は拡大していくとの見方を示した。
他の生保では、第一生命保険が4ー5年前からキャリア採用に力を入れている。広報担当者によると、具体的な人数は開示していないが、社員による紹介を通じた「リファラル採用」や退職者を再び雇用する「ウエルカムバック制度」などにより、採用数は年々増えているという。