年金受給者は「合法的に2重取り」できる…6月から実施の「定額減税」はなぜこんなに不公平な仕組みなのか
■「調整給付金」は今年と来年の2回を予定 さて、控除が多い等で「定額減税」が引ききれない場合、「調整給付金」が支給されます。 「調整給付金」は、今年6月以降と、来年夏の2回が予定されています。 今年6月からの「調整給付金」では、「3万円の所得税減税」を引ききれない分を、「1万円切り上げ」で計算し、前もって給付します。 例えば「子どもが3人いる4人世帯、昨年の所得税額が1万9700円の人」の場合を考えてみます。 この場合、「所得税減税の総額」は「3万円×4人=12万円」となります。 ただ、昨年の収入ベースだと所得税を1万9700円しか納めておらず、引ききれません。 「1万9700円-12万円=-10万3000円」も減税しきれない額が発生します。 そのため、「10万3000円を切り上げて11万円」として、「調整給付金11万円を今年6月に支払う」、ということになります。 ■「1人5万円近くもらう人」も出てくる 2回目の調整給付金は令和7年夏頃に実施されます。対象は、「令和6年中に収入が減り、さらに給付金の支給が必要になった方」などです。 令和6年の実績の所得税額で計算し、再度1万円切り上げで給付金が支給されます。 なお、調整給付金は「1万円ごと切り上げ」のため、もらえる「調整給付金」は上振れします。なので、定額減税で「1人5万円近くもらう人」も出てくることになります。 このあたりが今回の定額減税制度の非常に不思議な部分です。 ちなみに「調整給付金」は所得税減税の分も含めて、手続きは市区町村で行います。申請方法は市区町村ごとに異なり、実施時期も異なりますので、お住まいの市区町村HPなどを確認してください。
■ふるさと納税・iDeCo・住宅ローン控除は影響なし 定額減税についてよく寄せられる質問について回答します。 「ふるさと納税をすると住民税が減るが、定額減税される額にも影響するのか」という質問をいただくことがあります。 結論から言うと、ふるさと納税は定額減税に影響しません。 定額減税は「令和6年分の住民税」、今年のふるさと納税に影響があるのは「令和7年分の住民税」だからです。 医療費控除や寄付金、iDeCo、住宅ローン控除といった、よく使われる節税対策も同様に定額減税には影響しません。 ただ、控除が多い方の場合、定額減税が引ききれず、調整給付金をもらう場合があるため、注意が必要です。 ■「給付金と2重取り」が可能 「物価高騰対策の支援給付金(7万円・10万円)をもらっていますが、定額減税の対象になるでしょうか」という質問もよくあります。 住民税非課税世帯を対象とした支援給付金は、今回の定額減税とは別の制度ですので、今年から収入が増えた場合などは重複して受け取ることが可能です。 「夫婦で、令和5年中は共稼ぎ、令和6年から妻が産休、夫の扶養に入った」という場合はどうなるでしょうか。 所得税減税については、令和6年末の時点で判断されます。令和6年から産休に入り、夫の扶養に入ったわけですから、そのことを会社に伝えれば、「妻は夫の扶養」と判定されます。したがって、「今年6月の時点で、夫の給与で2人分の所得税減税が受けられます。 しかし住民税については「扶養かどうかは令和5年末の時点で判定」されます。 そのため、上記のケースだと、妻は扶養家族とみなされません。夫、妻それぞれの住民税において「1万円の住民税減税」を受けることになります。