年金受給者は「合法的に2重取り」できる…6月から実施の「定額減税」はなぜこんなに不公平な仕組みなのか
■控除が多い場合は「調整給付金」 「調整給付金」の対象は、たとえば以下のような方々です。(東京23区での例、控除・社会保険料の額によって変わるため、あくまで概算の金額となります) ---------- ・給与収入、1人暮らしで年収115万~210万円 ・給与収入、3人家族(配偶者+大学生の子ども)で年収235万~575万円 ・給与収入、4人家族(配偶者+小学生2人)年収270万~535万円 ・年金収入、1人世帯で年収160万~230万円 ・年金収入、2人世帯で年収220万~355万円 など ---------- これらの人員構成にかかわらず、3200万人が対象となる見込みです。 ■所得税と住民税にはズレがある 所得税減税の額は、扶養家族の人数によって変わります。 配偶者が扶養に入った場合、子どもが生まれた場合、亡くなった場合など、扶養家族が増減する場合もありますが、所得税減税については今年の年末調整の時点、「令和6年12月31日」時点で判定されます。 ただ、住民税は所得税と違い、基本的に一年遅れで税金を支払います。そのため、住民税減税の額は、昨年末、「令和5年12月31日」時点の扶養の状況で決まります。 この「1年のズレ」の間に、お子さんが生まれたり、あるいは家族が出国したりした場合、「所得税減税は受けられるが、住民税減税は受けられない」ため、「1人あたり4万円減税」とならないケースもある、ということです。 しかも、この「調整給付金」は自治体にもよりますが、自分から申請しないともらえません。そのため、自分が「調整給付金」の対象かどうか、しっかり確認したほうがいいと思います。 自治体の現場も混乱していてミスも起きていますので、市区町村からの通知を鵜吞みにせず、自分で確かめる必要があります。
■所得税減税は6月の給与、住民税減税は11カ月分割 では「定額減税」はどのような流れで実施されるのかをご説明していきます。 会社員・パートなど給与収入がある方の場合、6月の給与や賞与で「3万円の所得税減税」が実施されます。これを「月次減税」といいます。 もし所得税納付額が3万円以下で、6月給与では引ききれなかった場合、7月、8月も引かれます。 また、12月の年末調整で再計算され、減税額が3万円に足りない場合はさらに減税されます。これを「年調減税」といいます。 一方、「1万円の住民税減税」はどうなるでしょうか。こちらは、まず「6月の住民税を0円」にした上で、「住民税の支払い予定額から1万円を引いた額」を、7月から翌年5月までの11カ月間に分割して徴収します。 所得税減税は6月から年末、住民税減税は時間をかけて来年5月まで徐々に減税するという、なんともバラバラな仕組みになっているわけです。 ちなみに副業をしている場合は、年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)」を提出した会社で定額減税されます。「マル扶」を複数の会社に提出している人は間違いですのでご注意ください。 ■年金受給者かつ働いている人は「2重取り」が可能 以上は給与収入がある人の場合でしたが、年金受給者の場合はどうなるでしょうか。 年金受給者の場合、6月の年金で「3万円の所得税減税」が実施されます。 ただ、年金をもらいながら働いている人も多いと思います。 その場合、結論から言うと「2重取り」が可能です。 6月の年金で「3万円の所得税減税」を受ける上、勤務先の会社の給与でも「所得税減税」を受けます。 本来、減税が重複した分は、「令和6年分の確定申告」で「3万円増税」されて取り戻される仕組みになっています。 ただ、年金収入が年400万円以下、それ以外の所得が年20万円以下の人の場合、 あるいは給与収入が年2000万円以下、年金収入が年130万円以下の人の場合、確定申告は不要です。 3万円増税されるために申告する必要はありませんから、これらに該当する方は「もらい得」になります。 ただ、年金をもらいながら働いている場合、給与が高くないため、「会社の給与での所得税減税は数千円程度」だと想定されますので、3万円まるまる2重取りになるケースは多くはないと思われます。