根尾昂は中継ぎと代打の"二刀流"でこそ輝く!立浪ドラゴンズに直球提言
さまよい続けたポジション
しかし、根尾のプロ野球選手としての道は"紆余曲折"と言える。「ショートをやりたい」という本人の希望もあって、1年目は「内野手」のショート。しかし、2年目の2020年シーズン途中から、強肩を活かして外野手に転向した。3年目は「8番レフト」で開幕戦にもスタメン出場した。 4年目は新しく就任した立浪監督が当初「外野手1本」と明言したが、シーズンに入って一時ショートも守り、まもなく今度は「投手」に転向した。中継ぎとして登板するも、シーズン最後には先発登板、そこからは「先発投手」としてローテーション入りをめざしてきた。「投打ともにセンスがあるからこそ」と言える一方で、「どちらも秀でていない」という厳しい見方もある。
球場の空気を変える男
2024年ペナントレース、セ・パ交流戦を前に、1軍を離れて2軍で再調整を始めた根尾。5月26日のナゴヤ球場では、ほぼ1か月ぶりに2軍の先発マウンドに上がったが、8安打2失点で6回の途中に降板した。 4イニングを投げたタイガース戦での"ある場面"が浮かぶ。それは、8回裏のことだった。続投中の根尾に打席が回ってきた時である。ワンサイドゲームに元気のなかった応援席から、この日一番とも言える大きな歓声と拍手が巻き起こった。結果は空振り三振だったが、リリーフ登板を場内コールされた時と同じように、根尾昂という存在は一瞬にして球場の空気を変える。 それは誰もが持っているものではなく、根尾だけが持つ"宝物"でもある。この能力を活かすために「リリーフの中継ぎ」そして「代打」、この"二刀流"という道はないのだろうか。この試合、打席に立った時の根尾の表情は、マウンドに立つ時と同様に、いやそれ以上に輝いていた。高校時代のように「投げて打って」という両方をこなしていくことが、実は根尾という選手のエネルギー源になるのではないだろうか。そんなユニークな選手も中にはいるのではないだろうか。
根尾をどう活かしていくのか?
「根尾のことを一番見ているのは自分だ」と、かつて立浪監督は筆者へのインタビューで語った。その言葉を信じたいと思う一方で、実際の起用方法に、竜党として淋しい思いを否めない。ドラゴンズにとって待望久しい全国区のスター候補の輝きも、歳月と共に色あせていく。それがプロの世界である。 根尾をどう活かすのか、これは時の監督ひとりが背負うのではなく、獲得したドラゴンズ球団が背負うべき課題である。もちろん、根尾本人が誰もが認める実力を発揮することが第一義なのだが、すでに入団6年目、24歳となった根尾昂を愛するがこそ、ファンとしてヤキモキする日々が続く。 【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】 ※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が"ファン目線"で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。
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