超貴重なデ・トマソ「ヴァレルンガ」が約2880万円で落札…相場よりもかなり安かった理由はスーチャー付きの魔改造のせい!?
ニューヨーク近代美術館に展示された数少ない自動車のひとつ
プレス加工されたスチール製バックボーンフレームと、鋼管を組んだサブフレームで構成されるヴァレルンガは、トリノの名門カロッツェリア「ギア」の架装によるFRPボディを合わせても726kgに過ぎないウェイトと剛性を両立。英国フォード「コルティナ」用の直列4気筒OHV・1498cc「ケント」ユニットを搭載。最高出力はわずか105psにもかかわらず、200km/h以上のスピードを易々とマークすることができた。 また、モータースポーツ由来のダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションと、エンジンも構造材とするフォーミュラスタイルのマルチリンク式リアサスペンションの効力により、曲がりくねった道でも力を発揮した。 ところで、この可憐な美しさを見せるボディについて、ボナムズ社の公式ウェブカタログでは「ジョルジェット・ジウジアーロが描いた」と記されている。たしかにヴァレルンガがデザインされた時代に、ジウジアーロがギアに籍を置いていたのは間違いのないところで、単純な誤りとも思えない。 しかし市販モデルに移行する前段階で、デザインワーク・製作ともに別のカロッツェリア「フィッソーレ」に委ねられたアルミボディの試作型ベルリネッタは、すでに量産型ヴァレルンガのギア製FRPボディにかなり近いスタイリングだったことから、一般的にヴァレルンガのデザイナーといえば、フィッソーレ所属のフランコ・マイナだったとする説が有力とされているようだ。 ともあれ、ヴァレルンガの美しさは誰もが認めるものであり、1966年にはニューヨーク近代美術館に展示された数少ない自動車のひとつとなった。さらに、現在のクラシックカーマーケットにおける高評価の要因として、このスタイリングの魅力が大きく作用しているのも間違いのないところであろう。
スーパーチャージャーつきの魔改造ヴァレルンガ
このほど、ボナムズ「ONLINE」オークションに出品されたデ・トマソ ヴァレルンガは、近年にスペシャリストの手によって施されたレストアと「軽いカスタマイズ」の恩恵もあって、じつにユニークな1台とアピールされていた。 もともとはギア社が製造したわずか50台(ほかに「53台説」など諸説あり)のうちのひとつで、1967年5月27日にイタリア・ロンバルディア州ヴァレーゼに新車として納車されたものという。 ただ、1983年まで北イタリアとローマに生息していたことは分かっているものの、その後2003年6月に、スペインのデ・トマソ愛好家が入手するまでの足跡は不明のようだ。それでもこの個体はバルセロナに輸出されたのち、デ・トマソのスペシャリストの手によってレストアされるとともに、かつてデ・トマソ自身が提案したことから時代考証の面でも正しいと標榜される、一連のモディファイが加えられることになった。 まずグラスファイバー製ボディのフェンダーは、13インチのクロモドラ社製ワイドホイールを装着するためにわずかに拡幅され、フォーミュラ3マシンからコンバートされたフォードの4気筒ケントエンジンには、1基のウェーバー社製48口径のキャブレターを介して、なんとスーパーチャージャーが取りつけられている。 ただし、フォルクスワーゲンから流用した(ケースを共用した英ヒューランド社製に非ず)正しいデ・トマソのギアボックスは、そのまま残されているとのことである。