鈴鹿を疾走する謎のフォーミュラの中身はシビックタイプRのエンジン!? HRCがK20Cをベースにした新しいレース用エンジンを開発していた
フォーミュラカーの新エンジンはシビックタイプRと同じ!?
ホンダのモータースポーツ活動を担うホンダ・レーシング(HRC)は、現行シビックタイプRに搭載されているK20C型2リッターターボエンジンをベースにしたレース専用エンジン「HRC-K20C」を開発中であることを発表した。 【画像】HRCによって開発中のK20Cベースのレーシングエンジン「HRC-K20C」の画像を見る K20C型エンジンといえば、「世界最速FF」を開発コンセプトに掲げる第3世代シビックタイプRを象徴するユニット。初めて登場したのは2015年に発売された先々代のFK2型で、当時の最高出力は310馬力/6500rpm。現行モデルのFL5型では最高出力330馬力/6500rpmを発生している。 HRC-K20Cは、このK20Cをベースとしたレース専用エンジンで、サーキットならではの長時間のフルスロットル走行に耐えうる耐久性を確保することを目指して開発。参戦を想定するカテゴリーのレギュレーションなどにより、300馬力台のSpec Aから600馬力クラスを狙ったSpec Dまで4種類の仕様が存在しているという。 この4つのスペックのうち、Spec Bは北米市場で販売されているDE5型アキュラ・インテグラタイプSをベースとしたツーリングカー車両、インテグラタイプS TCXに搭載されてTC AmericaのTCXクラスに5台が参戦。また、2024年6月のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムにも参戦した。 HRC-K20Cのシリンダーブロックは、K20Cの量産品をベースに鋳造方法を工夫して強化したものを使用。このSpec Bは強化ピストン、コンロッド、オイルジェット、高強度ボルト、オイルバッフル、および前述の強化シリンダーを採用している以外は、市販車用K20Cエンジンと同じとのこと。そして生産も市販車用K20Cと同様、アメリカ・オハイオ州のアンナエンジン工場にて製造される。 そして今回、スーパーフォーミュラの2024年シーズン最終戦を目前に控えた11月7日、このHRC-K20Cのトップグレードである「Spec D」を搭載した車両の実走テストが三重県・鈴鹿サーキットで行われた。 HRC-K20Cのうちもっともハイパワーを絞り出すSpec Dは、市販車用K20Cの部品を流用しつつ、高出力化に必要な部分には補強を加え、ドライサンプ・ミッドシップマウントに対応。 今回の走行テストに使用されたのは、スーパーフォーミュラの先代シャーシであるSF19で、当然ながらHRC-K20Cも縦置きに搭載された。 ほぼシェイクダウンと思われる走行テストは、ホンダのスーパーフォーミュラ開発車両『白寅』のドライバーでもある塚越広大選手が担当。テスト内容などは明らかにされていないが、HRC関係者によると「テスト走行に成功」したとのこと。 異なる馬力クラスのさまざまなレースカテゴリーに対応可能なHRC-K20Cは、高いポテンシャルと低コストを両立させるレース専用エンジンであり、HRCでは一般販売の可能性を探っていくとのことだ。
佐橋健太郎