【解説】首相指名選挙の行方 与党と野党、それぞれの“思惑”
鈴江奈々キャスター 「自民党は、首相指名選挙にはどのように臨むとみられているのでしょうか?」 政治部・野党担当キャップ 天野裕貴記者 「自民・公明の与党で過半数の議席がないので、石破さんが再び首相に指名されるためには、野党の協力があった方がいいことは言うまでもありません。そこで石破首相が注目しているのが、国民民主党なんです」 「かねて国民民主党の玉木代表は、政策実現のためなら与党との協力も排除しない考えで、実際に岸田政権のときには、部分的に政策協議を行ったこともありました。そのため、複数の政府与党関係者によると、石破首相は国民民主党に対して、近く政策ごとに政権への協力を呼びかける考えだということです。そもそも首相指名選挙だけではなく、与党で過半数がない中で安定した政権運営をするためには、野党の協力が不可欠となっています」 鈴江キャスター 「協力を求めるからには、国民民主党側にもメリットが必要だと思いますが、玉木代表は連立入りも大臣ポストなども否定していますよね?」 天野記者 「玉木代表は29日の会見でも、そうした見返りについては明確に否定した上で、次のように政権をたしなめました」
国民民主党 玉木代表 「今までと同じような発想と、意思決定のルールでは、なかなか政権の維持は難しいという現実にも、謙虚に向き合っていただいて。全て民意だと思う。過半数を割ったという状況の中で今、政権に求められるのは、丁寧に多くの声に耳を傾けることだと思うんです」 天野記者 「玉木代表が求めているのは、あくまで『政策実現』ということを受けて、石破首相は政策ごとの協力である部分連合、いわゆるパーシャル連合を呼びかける考えです。現職閣僚の1人も『少数与党となるならば、野党の要望にはひとつひとつ丁寧に応じる姿勢を見せ続けることが大事』『少しでも横柄な態度を見せたらおしまいだ』と話していました」
鈴江キャスター 「国民民主党の対応が注目されていますが、2つ目の疑問です。野党第一党の立憲民主党は148議席という大きな塊ですが、どのような戦略で臨む考えなのでしょうか?」 天野記者 「立憲民主党の野田代表は、まずは首相指名選挙で1回目あるいは決選投票で『野田佳彦』と書いてもらえるよう、野党各党に呼びかける考えです」 「中でも選挙前の臨時国会で、石破内閣に対する不信任案を共同提出した日本維新の会、国民民主党、共産党の3党が念頭にあります。一度は石破内閣に失格のらく印を押したにもかかわらず、1か月もたたないうちに、『石破首相』と書くのは筋が通らないということなんです」 鈴江キャスター 「ただ『石破首相』とは書かないまでも、他の野党が野田氏の名前を書くとも限らないですよね?」 天野記者 「国民民主党は今後の協議次第として、他の政党の代表の名前を書く可能性は残しつつも、現時点では1回目も決選投票も『玉木雄一郎』と書くと明言しています。また、日本維新の会のある幹部も『もちろん馬場代表』と述べていました」 「立憲民主党幹部の1人は『特に国民民主は今、勢いに乗っているから、協力してもらうのはなかなか難しいだろう』と漏らしていましたが、立憲民主党としては今後、党首会談などを通じて、なるべく野党が結束できるよう、各党に呼びかけていく考えです」