「マウンドに上がるまですごく恐怖心があって、足もガタガタ震えてました」今永昇太が語る“日本人対決の舞台裏”と大谷、山本へのリスペクト<SLUGGER>
「ホームランだけは避けなければいけない場面だったので、遠く、低くというボールから入っていったけど、その後の2球は力んでボールが続いてしまった。四球を出して、無死満塁の方がまだいいんじゃないかな? という考えもあったので、僕の中で次は真っすぐかなとも思ったんですけど、僕が想像できることはおそらく、バッターも想像できること。僕が真っすぐを投げたい時はバッターも真っすぐが来ると思ってるはず。そこで勇気を持って、自分の得意球ではなくて、相手が予測してなさそうな、一番確率が低そうな球を選択したのが良かったなと思います」 4回、エドマンに2打席連続のソロ本塁打、5回には7番マックス・マンシーにソロ本塁打を許しているが、今永のマインドはすでに、“先発投手の心得”第四章に切り替わっていた。それは「5回、6回と試合中盤になると自分が交代するタイミングが見えてくるので、そこまで全力で行く」である。 6回は三者凡退。7回には無死一塁から冷静に一塁牽制で最初のアウトを取ると、次打者のヒットを意味のないものにし、7回を89球で切り抜けた。今季27度目の先発で、17度目のQS(クオリティ・スタート=6投球回以上&3失点以下)は上出来で、味方打線が直後に5点を奪って逆転したことで13勝目が転がり込んできた。 「先発ピッチャーはイニングを投げなければいけない立場にあると思う。今日に関しては6回3失点ではなくて、7回3失点、最後、7回にマウンドに上がったということが(13勝目の)一番大きな要因だと思う」 ドジャースとの3連戦が終わり、登板予定のないロッキーズとの3連戦の最中、今永はロサンゼルス遠征を振り返り、試合直後に言った「楽しみました」ではなく、大谷や山本に対する尊敬の念を口にした。 「あそこ(ロサンゼルス)で野球をして思ったのは、『あの環境でやっている山本選手と大谷選手って凄いな』ってことです。球場には日本人の方も多いし、日本のメディアの数もめちゃくちゃ多い。その中でやるプレッシャーっていうのは、僕らが普段いる環境とは違うような気がする。ましてや山本選手の場合は復帰登板で、日本人対決でって、いろんなものが重なった中でのあのパフォーマンスですから。普通の精神状態だと、あそこまでのパフォーマンスは出ないと思う。僕はいろんな情報を入れてしまうタイプなので純粋に尊敬するし、より一層、彼らの凄さを実感しました」 いやいや、あなただって十分、凄いことをやってるんだぜ、とカブス番記者は思うのだけれど、彼にはまだもう少し成し遂げるべきことがあるようだ。 「規定投球回(162イニング。現在160.1イニング)に達したいのはずっと言ってきたこと。メジャーで規定投球回を投げるのは決して低いハードルではないと自覚して、ローテーション回っているので、そこまでもう少しのところまで来ている、という実感はありますね」 文●ナガオ勝司 【著者プロフィール】 シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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