<統一地方選>“野党の見えない”選挙を続ける日本政治
統一地方選挙の前半戦は、安倍自民党が政権に返り咲いた2012年以来の国政選挙と全く同じ傾向を示した。過去最低の投票率、そして与党の勝利というより野党の敗北という結果である。 【図表】統一地方選「後半戦」の日程と過去の投票率
自民離れ以上の民主離れ
2012年の衆議院選挙は自民党が絶対安定多数を上回り、公明党を加えれば衆議院の三分の二を越える勢力を獲得して政権に返り咲いた。しかし投票率は59.32%と過去最低を記録し、しかも自民党は得票数でも得票率でも民主党に政権交代を許した前回を下回った。絶対得票率は比例で16%と有権者の6人に一人しか支持していない。 自民党の返り咲きが熱烈に支持されていないのに自民党を大勝させた理由は野党の四分五裂にある。野党の得票数を足せば自公を上回り、野党が一本化されていれば自民党が政権に返り咲く事はなかった。 翌13年の参議院選挙でも自民党は過去最多の議席を確保し、公明党と合せて過半数を越え、衆参の「ねじれ」は解消された。しかしこの選挙も投票率は前回を下回る過去三番目の低さである。そして自民党の牙城である富山、山口、福井、島根などの選挙区で投票率が10%以上も下がった。自民党支持者の自民党離れに歯止めがかからないのである。 ところがそれ以上にひどかったのが民主党で、結党以来最少の17議席しか獲得できず、東京、京都、大阪などの都市部では全敗、第三極や共産党の後塵を拝した。得票数も菅直人総理が消費増税を打ち出して敗北した前回選挙から半減する。自民党離れを上回る民主党離れが与党大勝を生みだした。 そして昨年末には突然の解散・総選挙が行われた。安倍総理は「消費税先送りで国民の信を問う」と宣言したが、消費税先送りで選挙をやる必要などさらさらない。それよりも今年は多事多難が予想され、支持率を維持できるかどうかが危うい。安倍総理は勝てるうちに勝つという守りの選挙に踏み切ったのである。
下がり続ける投票率
野党が結集する前に勝てる選挙をやり、自民党常勝ムードを演出して安倍政権の支持率維持に利用しようとした。衆議院で三分の二の勢力を持つ自公が再び三分の二を得ただけの結果をメディアには「圧勝」と報道させた。 投票率はさらに下がって戦後最低を更新するが、この低投票率も安倍政権が演出した結果である。解散の大義が理解できない選挙を年末の忙しい時期に仕掛けて国民の関心が集まらないようにしたのである。 安倍政権の選挙戦略は「(1)野党結集をさせない状態を作り、(2)国民にアベノミクスに対する期待感を持続させ、(3)低投票率に持ち込む」ところにある。野党の顔が見えず、国論を二分するようなテーマがなく、低投票率になれば、組織票を見込める自公は選挙に勝てる。それがこの統一地方選挙でも発揮された。 「官製相場」と言うが、安倍政権は投票日直前に株価を上げ、「株価2万円越え」をメディアに大々的に報道させ、国民にアベノミクスに対する期待感を甦らせた。与党候補者を当選させる事が景気の好循環につながると思わせたのである。「地方創生」が選挙のテーマであったはずだがそれは論争にならず、最後は「アベノミクスの期待感」に頼る選挙になった。 投票率はやはり過去最低で、野党の顔が見えない選挙であるのも同じである。中でも民主党の顔が全く見えない。選挙に勝てる顔とは言い難い岡田代表と3・11の時の官房長官としてマイナスイメージが付きまとう枝野幹事長のコンビでは、選挙に勝とうとしていないと思われても仕方がない。唯一顔の見える共産党が野党の中で議席を伸ばす事になる。