ＮＨＫ大河ドラマ「光る君へ」第２６回「いけにえの姫」のワンシーン。まひろ（吉高由里子）は夫・宣孝（佐々木蔵之介）と仲むつまじい時を過ごす

　女優の吉高由里子が主演するＮＨＫ大河ドラマ「光る君へ」（日曜・後８時）の第２６回「いけにえの姫」が３０日に放送される。 【写真】顔を真っ白にした宣孝（佐々木蔵之介） 　大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品。大河ドラマではきわめて珍しい平安時代の貴族社会を舞台に、１０００年の時を超えるベストセラー「源氏物語」の作者・紫式部／まひろの生涯に迫る。２３日に放送された第２５回「決意」では、まひろ（吉高由里子）が越前から帰京し、宣孝（佐々木蔵之介）からの求婚を受け入れる一方で、都には凶事が押し寄せるさまが描かれた。 　父・為時（岸谷五朗）から、都に戻って人生を見つめ直すように促されたまひろ。宣孝の“トリセツ”として「お前をいつくしむであろうが、ほかの女子もいつくしむであろう。お前は潔癖ゆえそのことで傷つかぬよう心構えはしておけよ」と助言される。京に戻るまでの１年あまりで侍女のいと（信川清順）、従者の乙丸（矢部太郎）にもパートナーができた。このままでいいのか、いけないのか。まひろにも決断の時が近づく。 　一条天皇（塩野瑛久）は、呼び戻した定子（高畑充希）の職御曹司（しきのみぞうし）に入り浸り。安倍晴明（ユースケ・サンタマリア）は、京には天変地異が相次いで訪れることを予告。禍の根本を断ち切るため、道長（柄本佑）に「お宝」のカードを使うように進言する。 　太宰府から帰還し職御曹司に姿を現した定子の兄・伊周（三浦翔平）は、ききょう／清少納言（ファーストサマーウイカ）の「枕草子」を切り札のカードとして、復権をにらむ。本来は定子のために記したつれづれ話だったはずが、権力争いの道具になってしまうやりきれなさが切ない。招かれた公任（町田啓太）も笛の音を響かせ、文学談義をする。このくだりは「枕草子」にも記されているし、かつての宮中のサロンのようなことが繰り広げられているのだが、そのムードが圧倒的に暗い。照明のこだわりなど、細部の演出の細かさも感じる。 　定子と寝所にこもりっきりで、政などなおざりになってしまった帝は鴨川の堤の修繕の進言も意に介さない。行成（渡辺大知）の中間管理職の悲哀には同情するが、大雨での堤防決壊という最悪の事態に。道長は、多くの民の命が失われたことの報告とともに左大臣職への辞意を帝に申し出る。「その罪は極めて重く」「こたびの失態」と自らを下げつつも、真意は別のところにある。激しい怒り、悲しみ、そして一種の脅し。静かなセリフ運びの裏に、さまざまな感情が渦巻く。 　宣孝は道長のもとを訪れ、為時の娘・まひろが夫を持つこと、その夫が自分であることをウキウキと告げる。バカデカいマウントをとられ、「フッ、それは何より」と返すしかない道長。先述の帝とのやりとりとは全くベクトルが違うが、今回は道長のセリフの裏に、異なる感情がこもる描写が続いた回だった。語らずとも感情が分かる演技力に引き込まれる。 　道長からの祝いの品に添えられた文は、代筆で文面も定型感満載。ほぼ腹は決まっていたまひろだったが、その手紙がダメ押しとなり結婚を決意する。新婚初夜、「不実な女でございますがそれでもよろしゅうございますか」と新妻とは思えない所信表明をするまひろに、宣孝も「わしも不実だ。あいこである」とさすがの切り返し。不実な夫婦の運命はこの先どう転がっていくだろうか。 　第２６回は、災害続きの都に凶事が訪れるところからスタート。京は大地震に襲われ、まひろは壊れた家を宣孝の財で修繕し暮らしていた。一方、道長は、晴明から、天変地異を治めるためには道長の娘・彰子（見上愛）を入内させるしかないと進言される。心労から体調を崩した一条天皇は、譲位して定子と暮らしたいと行成に相談。それを聞いた道長は…という展開が描かれていく。 　成人した彰子が初登場。ここまで娘たちの入内に消極的だった道長が、いよいよ、我が身を切る決断に迫られる。史実上、まひろにとっても彰子はこの先の人生に密接に絡んでくる重要人物だけに、彰子の描写からも目が離せなくなりそうだ。ちなみに、今回のラストシーンは「うぉぉ…」というところで終わり、次回予告も含めてめっちゃ気になる幕切れである。そんななかで、翌週は都知事選投開票特番のため休止、という…。この怒涛（どとう）の展開を予感させたまま、何もせずに２週間過ごすのはなかなかの苦行。みなさんと語り明かしたい話題は山ほどあるけれど…また再来週にお会いしましょう。（ＮＨＫ担当・宮路美穂）