ボードゲームで“失敗を重ねる” 成蹊大ゼミ生が「プロジェクト管理講座」で学んだこと
2024年9月24日、成蹊大学 経営学部の「伊藤克容ゼミ(伊藤ゼミ)」にて、ボードゲームを用いた「プロジェクト管理講座」が開催された。ゼミ生たちは、ゲームで“上手に失敗する”ことを通して、チームで活動するためのコツを学んでいる。 【もっと写真を見る】
成蹊大学 経営学部の「伊藤克容ゼミ(伊藤ゼミ)」で、2024年9月24日、ボードゲームを用いた「プロジェクト管理講座」が開催された。 「企業行動研究」をテーマに、グループワークや他大学との合同研究発表など、様々なプロジェクトに挑戦している伊藤ゼミ。産学連携のプログラムも積極的に取り入れており、今回ヌーラボの協力を得て実現したのが本講座となる。ゼミ生たちは、ゲームで“上手に失敗する”ことを通して、プロジェクトの進め方やチームで活動するためのコツを学んだ。 本記事では、当日のプロジェクト管理講座の様子および伊藤教授やヌーラボの同講座開催の狙いについて紹介する。 ボードゲームでプロジェクト管理を学べる「プロジェクトテーマパーク」 今回の講座で使用したボードゲームは、2019年にヌーラボがリリースした「プロジェクトテーマパーク」だ。プレイヤーがアトラクション建築チームのメンバーになり、メンバーどうし協力しながらテーマパークのオープンを目指すゲームである。 講師を務めたヌーラボのPR担当 認定ワークショップデザイナーである安立沙耶佳氏は、プロジェクトとは「目標を期限までに達成するすべての活動」と定義する。このゲームにおける「目標」は、6か月後に迫った開園に向け、一定数のアトラクションを完成させることだ。 各プレイヤーには、ランダムに「新人」「エース」「マネージャー」「愛されキャラ」といった役割が割り当てられる。その上で、チームで建築計画を立てながら、アトラクションの建築に挑んでいく。建築成功の判定は、各プレイヤーの持つ「やる気カード」やサイコロを振った数字に委ねられる。 目標クリアのためのポイントは、チーム内でのディスカッションだ。建築見積りのターンで、ルール上共有できないやる気カードの数字を間接的に伝えて、役割や状況に応じて何を建築するかを話し合うことが重要になる。 今回の講座では、5チームに分かれたゼミ生たちがまずお試しプレイでルールを覚え、各チームで必勝法を考えたうえで、本番のゲームに挑戦した。 “失敗と仲良くすること”がプロジェクト成功と成長の鍵 なぜボードゲームを通じてプロジェクト管理を学ぶのか。それは、“本来であれば失敗できない”プロジェクトを疑似体験できるからだ。「ゼミの活動ならば、新しいゴールへと軌道修正することもあるかもしれない。しかし現実は、橋を架けるプロジェクトで“架けない”選択肢が取れないように、目標が定まっていて、失敗もできないことが多い」と安立氏。 ボードゲーム自体も、チームが自然と失敗やトラブルに向き合える設計になっている。サイコロの数字次第で建築はあっさり失敗してしまうし、月ごとに発生するイベントではトラブルが起きる可能性もある。 建築の成功や失敗に応じて増減する「信頼度」を消費すればサイコロを振り直すこともできるが、信頼度がゼロになると即ゲームオーバーになる点もリアルだ。 最終的に、規定のアトラクションを建てられたチームは5組中2組。全チームが目標達成とはならなかったが、これがこのゲームの平均的な勝率だという。 終了後、ゼミ生からは、「言い辛くても、自身のモチベーションを共有するのが大事」「役割を理解して、分かり合うことがプロジェクト成功の鍵」「シミュレーションで試行錯誤したことは、今後のゼミ活動に活きる」「個性の強いゼミのメンバーが、得意不得意を補い合うと上手くいく」といった、さまざまな学びが挙げられた。 最後に安立氏は、「失敗と仲良くしよう」というゲーム制作者のメッセージを紹介。「いかに真剣に失敗するか、いかに色々な役割で失敗するか、いかに上手に失敗するかを重ねていくことで、プロジェクトは成功する。失敗と仲良くなることで、学習も上手くなり、就職してからの成長にもつながっていく」という言葉で、プロジェクト管理講座は幕を閉じた。 学生時代からプロジェクトベースの働き方に備えよう 伊藤ゼミがプロジェクト管理講座を取り入れた狙いは、ゼミ活動だけではなく、卒業後にプロジェクトベースで仕事をする際にも、能力を発揮できるようになって欲しいという想いからだ。講座冒頭、伊藤教授は、「いわゆる“JTC(Japanese Traditional Company)”の働き方は終わった。自身の役割をプロジェクトごとに果たせるようにならなければいけない」と呼びかけた。 加えて、「ベースの知識が多くなり、課題ごとに即興で成果を出すことが求められている。様々な状況かつ様々な人との連携の中で、自分は何ができるかを考える力が必要。レポートラインや役割が変わっていく中で、どうバリューを出せるかを体験できるのがすごく良い」と、この講座の内容を評価した。 一方、ヌーラボの安立氏は、他大学にも講座を実施する中で、「とにかく皆元気で、積極的で、挙がった学びも多かった」と今回の講座を振り返る。本来は、「プロジェクトなんて関係ない」と思っている社会人向けに作られたボードゲームではあるが、学修や就活の中でグループワークを行う機会が増えており、大学からの問い合わせも多いという。 大学以外にも、宿題をプロジェクトに見立てた小学生向けワークショップの開催など、プロジェクトやチームでの活動に早くから慣れてもらうための活動に注力している。最終的には、同社のプロジェクト・タスク管理ツールである「Backlog」の利用につなげたいと足立氏。「ゼミの活動もBacklogにフィットする部分が多く、福岡大学のゼミでも活用されている。『実はプロジェクトって身の回りにあるんだ』と気付いてもらい、ゆくゆくはBacklogも試してもらいたい」と語った。 文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp