これが小さなフィールドで繰り広げられる、一度たりとも同じ旅路のない大冒険だ。『Tiny Rogues』【げむすぱローグライク/ローグライト部】
自動生成やパーマデス(一度死ぬとすべてを失う)など、さまざまな要素が絡み合い、何度遊んでも楽しむことのできるゲームジャンル「ローグライク/ローグライト」。今週の「げむすぱローグライク/ローグライト部」第2回では、現在Steamで早期アクセス中の2Dアクションローグライト『Tiny Rogues』をご紹介します。 【画像全15枚】 本題に入るその前に……「ローグライク」と「ローグライト」の解説をもう一度 ゲームの内容の紹介に入る前に、今回紹介するタイトルのジャンルは、弊誌としては「ローグライト」に分類します。前回の『Rogue』は、ジャンルとしては「ローグライク」に分類されます(ジャンルのオリジナルとなったゲームですが)。実際のところ、読者の方々には「“ローグライク”と“ローグライト”って、いったいどう違うんだよ!?」と思われる方も多いかもしれません。弊誌では過去にこの辺りの違いについて取り上げた記事もあるのですが、改めて、この記事でこれらの違いをご説明したいと思います。 2008年に各種ローグライクゲームの開発者が集って「国際ローグライク開発会議」が開催され、その中で「ローグライク」とされるジャンルのゲームに共通した要素を抽出した「ベルリン解釈」というものが提唱されます。これは以下のような要素から構成されます。 ランダムマップ生成 パーマデス(1度死んだら生き返れない) ターン制コンバット グリッド移動 複数の攻略法が可能な複雑さ 非モーダル(すべてのアクションがいつでも実行可能) リソース管理 ハックアンドスラッシュコンバット これらの8つの要素の多くを組み合わせたゲームが「ローグライク」だ、という訳です。前回紹介した『Rogue』は、上記8つの要素をすべて持ち合わせています。 それでは、「ローグライト」とはいったい何なのでしょう。これは2010年代後半に現れた『Slay the Spire』『Hades』といった、「ランダムマップ生成」「パーマデス」「リソース管理」などのローグライクを構成するような要素をいくつか持ちつつも、ゲームジャンルがRPGに縛られないゲーム(カードゲームやアクションゲームなど)に対して使われるようになった言葉です。こういった「ローグライト」ゲームが2010年代後半から2020年代にかけて流行し、「ローグライト」という言葉は「ローグライク」の要素・メカニズムをいくつか加えたゲームといった意味合いに変化していきます。また、専門家による明確な定義ではない、筆者独自の仮説となるのですが、「ローグライト」を名乗るゲームには以下のような特徴を持つことが多いです。 ゲームオーバーになるとゲームの進行に応じて何らかのリソースが手に入り、そのリソースで次回以降のプレイヤーの能力を伸ばしたり、新キャラクターがアンロックされたり……といった、ゲームを繰り返し遊ぶための報酬系が用意されている 上記で挙げた『Slay the Spire』であれば新カードのアンロック、『Hades』であれば自キャラクターの強化やNPCの好感度上げなど、次回以降のプレイを有利にする仕組みが用意されています。こういった報酬でプレイヤーが繰り返し遊びやすいのも、「ローグライト」の特徴といえるでしょう。 但し、ゲーム開発者の提唱する自作品のジャンル分けや、メディアにおけるジャンルの使用例では「ローグライク」「ローグライト」ともに明確な定義なく、割と「名乗ったもの勝ち」で使われている印象があります。事実、「ローグライク」と「ローグライト」の間に誰かが定義した、明確な線引きがあるわけではありません。前述した「ベルリン解釈」の多くが含まれていれば「ローグライク」、一部であれば「ローグライト」……という傾向はみられるものの、制作者及び各種メディアのライターの感覚で分類されているのが現状です。 何だか埒の開かない話になってきたので、当連載における「ローグライク」と「ローグライト」の分類基準について独自に基準を示しておきます。あくまで「独自解釈」なので、参考程度としてください。くれぐれも以下の基準を外部に持ちだして、「これはローグライクだ、いやローグライトだ」みたいな論争をしないように! ローグライク: 「ベルリン解釈」で提唱された要素を多く持つRPG、あるいはシミュレーションゲーム。 ローグライト: 「ベルリン解釈」で提唱された要素を一部と、繰り返しプレイの報酬系を持つ、あらゆるジャンルのゲーム。 伝統的ローグライク: 「ベルリン解釈」で提唱された要素を多数満たし、『Rogue』からの影響を明示しているRPG。 いきなり「伝統的ローグライク」という言葉を出しましたが、これはSteamのゲームジャンルタグにも使われている由緒正しいフレーズです。いわゆる「ガチめ」のローグライク、『Nethack』『Angband』『不思議のダンジョン』といったゲームを想定していると思って頂ければよいでしょう。「ローグライク」にシミュレーションゲームを加えているのは、初期のテーブルトークRPGはシミュレーションゲームから派生した近縁種といった経緯があり、また『Rogue』も一種のシミュレーションゲーム的なプレイ感覚があるからです。何はともあれ、当連載では上記の分類基準に従ってジャンル分けをしていきます。 前置きが長くなりましたが……小さな迷宮の大冒険に旅立とう さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、いよいよ『Tiny Rogues』の話をしましょう!本作は2022年9月24日から早期アクセスがSteamで行われている2Dアクションローグライトです。本作は2024年10月現在でも精力的なアップデートが行われており、個人的に今一番熱いローグライトゲームだと思っています。 まずはダンジョンに潜るキャラクターを決定しましょう。本作には非常に多彩なクラスのキャラクターが用意されており、クラスによって初期装備や能力値・スキルが異なります。最序盤のプレイ感覚がクラスによって結構違ったものとなるので、いろんなクラスを試してみましょう。なお、本作では様々な条件をゲーム内でクリアしていくことにより新たなクラスがアンロックされていきます。全てのクラスのコンプリートを目指すのも本ゲームの目標の1つです。 ダンジョンは敵の巣くっている部屋で構成されており、部屋内の敵を全滅させるアクションゲームとなっています。ゲームパッド操作の場合、左スティックで移動、右スティックorRTボタンで敵を攻撃、RBボタンでスキル攻撃(☆マークのスキルポイント消費、時間で回復)、LTボタンで緊急回避のダッシュが行えます。基本的にはRTを押しっぱなしにしつつ、敵の攻撃を避けていくといいでしょう。 敵を全滅させると、次の部屋への扉が開きます。次に向かう部屋は2つが提示され、それぞれに報酬が設定されていますがどちらかひとつしか選べません。各種能力値を上昇させる食べ物は経験値を挙げる効果を持ち、鍵は宝箱や閉じた扉を開け、爆弾は瓦礫で埋もれた扉やアイテムを取るのに役立ちます。時々、アイテムを売却・購入できる店や様々なサポートをしてくれる人が集う酒場、武器のアップグレードや防具の修理をしてくれる鍛冶屋などが出現することがあります。 食物を集めてレベルアップすると、現在の能力値に適応した才能スキルをランダムに得ることができます。上手く長所を伸ばしましょう。 各階層の10エリアにはボスが待ち構えています。ボスはレーザーや弾幕など、多彩な手段を用いてこちらを攻撃してきます。敵の攻撃予告をよく見つつ、危険な場合はダッシュで緊急回避を試みましょう。ダッシュは「>」シンボルが残っている限り使う事ができます(時間で回復)。 ダンジョンの深層ともなると、ザコですらレーザーや弾幕で激しい攻撃を仕掛けてきます。 深層のボスともなると画面全体を覆うようなド派手な攻撃も。敵の攻撃がヒットすると画面上部の盾やハートがひとつずつ失われていき、これが尽きてしまうとゲームオーバーです。 しかし、冒険者が死んでしまってもその経験が無駄になるわけではありません。先述の通り一定の条件を満たせば新しいクラスが出現しますし、倒したボスの数により「マスタリーポイント」が得られます。 マスタリーポイントを消費して、スキルツリーを解放し、さまざまな有利な能力を得ることができます。ゲームを繰り返すたび、プレイヤーにとって有利になっていく仕組みという訳です。 本作の魅力は、「何度遊んでも同じような武器を扱って戦う展開がない」ということです。本作には400種類以上の武器、500種類以上の防具が用意されており、ほぼすべての武器に固有の射程の攻撃が用意されています。剣やハンマーであれば短い射程の攻撃、杖などであれば長距離からの弾を撃つ……などですね。とは言え、近接攻撃は威力が高い傾向にあり、能力値が十分ならガンガン攻めていけます。 武器には「Damage Scaling」というパラメーターがあり、これはプレイヤーのSTR・DEX・INTに武器の威力がどれだけ依存するかを示しています。基本は自分の能力の方向性に合ったものを選べばよいのですが、自分の特性に合ったものがなかなか拾えなくて悩むことも。数回冒険を繰り返しても同じ武器に出会うことはめったにないので、その時々に応じた柔軟性がプレイヤーに求められます。 防具も本当に多種多様な能力を持ったものが揃っています。中には複数組み合わせると強力な能力が発動する「セット装備」もあり、めったに揃えることはできませんが、万が一揃うととてつもないパワーを発動させるセット装備もあります。セット装備のみが出る宝箱が配置された部屋が出ることもあるので、道中でセット装備の一部を拾ったら、揃えるのを狙ってみるのもよいでしょう。 本作の1プレイはおよそ30~40分で、適切な武器を拾えていればゲームのテンポも非常によく、例え敵にやられてしまってもやり直すのは容易です。これだけの何度も遊べるアクションRPGとしての要素を備えていながら、本作はまだ「早期アクセス」の真っ最中です。つまり、今後さらに進化していく可能性を残しているということです。読者の皆様も筆者と一緒に、本作が進化していく様を見つめていこうではありませんか! 『Tiny Rogues』は、PC(Steam)で早期アクセスが行われています。早期アクセス中の価格は999円です。早期アクセスの期間は2024年12月までを予定しており、早期アクセス終了後は値上げの可能性があるとのことです。
Game*Spark ずんこ。
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