<踏み出せ>智弁和歌山/中 埋めた「意識の差」 /和歌山
◇本音ぶつけ理解し合う 紀央館に敗れたチームは、投手陣と野手陣の歯車がかみ合わなくなっていた。大林優平投手(2年)は「みんなどこにぶつけたらいいかわからない怒りを抱えていた」という。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 投手陣の中で小林樹斗投手(同)、矢田真那斗投手(同)は2019年夏の甲子園を経験し、自信をつかみつつあった。その一方で、野手陣は守備練習でポロポロとボールをこぼし、プレーの質が上がらない。引退した3年生の堅かった守備とどうしても比べてしまった。矢田投手は「去年だったら捕ってくれたと思ってしまった。守備でのエラーに加え、好投していても点に結びつかない打線に不満を募らせた」と振り返る。 野手陣ももがいていた。決して手を抜いて練習に臨んでいたわけではない。しかし、綾原創太選手(2年)は「大量得点のチャンスに1点止まりだったり、確実に点が取れる場面で取れなかったり、何が前のチームと違うのか分からなかった」という。 新人戦の敗戦は、チームの大きなきっかけとなった。「俺らは抑えているのに」「こっちだってやっている」。投手陣も野手陣も本音をぶつけ合った。浮かび上がってきたのが、主力としてこれまで出ていた選手と、そうでない選手との「野球に対する意識の差」だった。 それはベンチワークにも表れていた。これまではレギュラーがプレーに集中できるよう、水分補給のドリンク、グラブや帽子を控え選手が準備するのが「当たり前」だった。しかし、それすらできていなかった。 新人戦後、実戦形式の練習が増えた。その練習の中で納得のいかないプレーが出ると「今のはこうやろ」と練習をいったん止めてとことん話すようになった。「会話が多くなった」と綾原選手。プレー一つ一つを言葉にし、理解し合う練習をしたことで、「意識の差」は埋まりつつあった。小林白彪選手(2年)は「チームにまとまりが出てきた」と話す。 県1次予選に臨んだチームは打線にもつながりが出始め、コールド勝ちや2桁得点もできるようになった。手探り状態ながらも2次予選に進み、守備位置も固定化されてきた。石平創士捕手や大西拓磨選手などの1年生の台頭もチームのプラスとなり、2次予選は決勝で和歌山南陵を6―2で破り優勝。近畿大会出場を果たした。中谷仁監督は「どっしりと腰を据えて戦うことができるようになってきた」とチームの成長を感じていた。