いまの日本は“複合物価上昇”…「良い物価上昇」と「悪い物価上昇」が入り交じる(中西文行)
【経済ニュースの核心】 物価上昇は2種類ある。好景気で消費者物価が上がる「良い物価上昇」と、不景気なのに円安で原材料価格が上昇し、輸入物価の上がる「悪い物価上昇」。いまの日本はこれらが入り交じる「複合物価上昇」に見える。 【写真】維新が自主公開した政活費“塗りつぶし”領収書にア然…身を太らせる高額会食ラッシュだった 「失われた30年」の間にハンバーガーはパン生地が小さく薄くなり、具材も少量となったが値上げされた。回転寿司はネタが薄くなった気がする。スナック菓子の袋は空気の量が増え、板チョコは薄く……そんな「ステルス値上げ」も多い。 郊外から都心に向かう通勤電車。定年延長・嘱託なのか白髪の高齢者が散見されるが、シルバーシートには若い男性が眠り、一般席は皆スマホに熱中し、前に立つ高齢者に席を譲る気配もない。失われた30年の間に高齢労働者が増えたが、お年寄りへの「思いやり」は減少し、人心は荒廃したようだ。 ニュースでは物価上昇を受け「デフレ脱却」と伝える。日銀は異次元緩和を終了、東証プライム市場(大企業)の業績は過去最高益と報じられるが、生活者に厳しい物価上昇がもたらす好決算なら、「好景気の物価高」ではなく「不景気の物価高」に見える。 ■夏ボーナスは好調だが… さて、日本経済新聞社がまとめた2024年夏のボーナス調査(23年夏と比較できる151社を対象=中間集計)は、平均支給額(加重平均)が前年比6.92%増の90万7772円と3年連続で前年を上回った。 支給額1位は641万8800円の三菱商事だ。同社の有価証券報告書によれば23年3月期の平均年収(平均年齢42.9歳)は1939万円。株価も過去最高値を更新と、三菱商事など総合商社に投資したウォーレン・バフェットに脱帽である。 国税庁によれば22年分(23年9月公表)の平均給与は458万円で、男性563万円、女性314万円だった。 収入による「勝ち組」「負け組」が生まれ、非正規雇用はアルバイトやパートタイムなどに細分化。労働組合の力は弱まり、広義で見れば労働者主導の賃上げ圧力は減退し物価上昇に賃金が追いつかない時代となった。 一般に「大企業」への親の期待は大きい。親の教育費負担は小中高公立校の教育費無償化で軽減されたが、この夏のボーナス報道を受けて、一流企業に就職しやすい有名進学校への受験戦争は激化しそうだ。 無償化で浮いたお金は学習塾や予備校などに充当されるだろう。こうした業界は無償化に加え、英語学習の低年齢化の追い風が吹いていよう。 (中西文行/「ロータス投資研究所」代表)