センバツ甲子園 海星 堂々の勝利 機動力で社降す /長崎
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第3日の20日、7年ぶり6回目出場の県勢・海星は社(やしろ)を5―1で破り、初戦突破を果たした。海星は次戦、第8日第3試合で広陵(広島)と準々決勝進出をかけて対戦する。【松本美緒、高橋広之】 海星は、持ち前の機動力と「守り勝つ野球」で、地元・兵庫県の社との厳しい試合をものにした。一塁側のアルプススタンドを埋めた生徒や保護者たちは、選手たちの堂々とした戦いぶりに大きな声援を送った。 海星は一回、先頭の田中朔太郎が内野安打で出塁。続く山口頼愛(らいあ)の犠打で田中は二塁に進んだ。山口の母恵美さん(41)は「息子が得意な機動力と小技を見せてくれた」。さらに田中は暴投で三塁に進み、続く永田晃庄(こうしょう)の左犠飛は浅かったが、田中が俊足を飛ばして本塁に滑り込み、先制した。 二回には、平尾幸志郎が安打と盗塁で二塁に進み、角野夢才志(むさし)が一、二塁間を抜く適時打を放ち追加点。右すねの疲労骨折で練習を約1年離脱しながら努力でスタメンを勝ち取った角野の父憲一さん(48)は「今まで支えてくれた人に恩返しができた」と顔をほころばせた。 五回には、2死一、二塁で田川一心主将が右越え適時三塁打を放って2点を追加。自身も海星の副主将だった父直秀さん(47)は「突き放す一本を打ち、うれしい」、弟の海心さん(13)も「いつも優しい兄が打ってくれてかっこいい」と喜んだ。 八回には無死一、二塁で、代打の江口煌雅(こうが)が犠打を決め1死二、三塁の好機に。井坂陸翔(りくと)の三ゴロで、三走の平尾が相手三塁手の送球動作が大きいと瞬時に判断し、本塁に突っ込んで生還。貴重な5点目を挙げた。平尾の兄聡一郎さん(19)は「チームのために必死に取った1点。普段は甘えん坊の弟がたくましく見える」と語った。 先発の吉田翔は走者を再三背負いながら緩急とコントロールで粘り強く抑え、七回まで134球、1失点の力投。父裕志さん(49)は「守りに助けられて何とか投げきった。しっかりと責任を果たした」とたたえた。最後は救援の高野颯波(そな)が締めた。 吉田は「疲れを取り、次戦は四球を出さないよう再調整したい」と気を引き締めた。 ◇精いっぱいの笑顔で応援 ○…アルプススタンドを彩った海星応援部の水谷梨乃部長(17)は、野球部の田川一心主将と海星中時代からの同級生。「必ず甲子園に行く」と手をまめだらけにして練習する田川主将の姿に、水谷さんは「自分も頑張ろう」と励まされてきた。 水谷さんは、2019年夏の甲子園で声援を送っていた先輩たちの笑顔に憧れて入部。初めてマスクを外して応援した水谷さんは「最初は緊張したが、選手たちが落ち着いている姿を見てすぐに吹っ切れた。精いっぱいの笑顔を出せた」と満足そうだった。 〔長崎版〕