「政治とカネ」政倫審再開の“舞台裏” 旧安倍派幹部が自民党執行部と交わした“3つの条件”とは
3)信頼回復のためには… 元会計責任者“参考人招致”への対応に注目
中北浩爾氏(政治学者/中央大学教授)は、野党が要求する派閥の元会計責任者への参考人招致との関連を指摘する。旧安倍派の会計責任者は自身の公判で、パーティ券収入のキックバック再開について「ある派閥幹部の要望だった」と述べていた。 参考人として、旧安倍派の会計責任者だった松本淳一郎氏の招致を求める野党の発言もある。これを回避するとなると、世間の理解を得られるかどうかは相当怪しいと言わざるを得ない。10月の衆議院選挙で自民党は、インフレなどの問題もあるが、やはり裏金問題、「政治とカネ」の問題が最も打撃になったのは間違いない。きちんと政倫審に出て、公開のもとで説明をすることが大切だ。例えば、参議院でも、過去に411万円の還流を受けていた西田昌司氏が政倫審に出て説明した。これは彼にとって決してマイナスにはなっていない。正々堂々と出た方が世間も納得するだろう。説明を尽くすことが参院選に向けても必要だ。もう早く、裏金問題について決着をつけた方がいい。 久江雅彦氏(共同通信特別編集委員)も、「安倍元総理が『パーティ収入の還流は止める』と言ったのに、なぜ還流が再開したのか、安倍派幹部は『わからない』と言って、問題が拡大した」と分析。「誠心誠意、話す」ことの重要性を指摘した。 末延吉正氏は(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、自民党が信頼回復するためのポイントについて以下のように指摘をした。 自民党は、いま起きている「政治の空気の変化」への感度が鈍い。そもそも旧安倍派から見れば、政倫審についても、執行部がこういう形で仕切るから待てと、ずっと調整をしてきた。それなのに説明もきちんとできないまま衆院選となり、比例復活もできず、旧安倍派は4割しか当選できなかった。しかも若手は当選してもポストに就くことができない。このままでは一人前の政治家としては扱われない、それでいいのかという部分でおそらく萩生田氏が動いたのだろう。 ただ、世の中から見れば、「ずるいことをしたのはそちらでしょ」と。国民は納得していない。「政治とカネ」の信頼を問う件は、国民はなかなか忘れない。そこを「永田町的な了解」で対処しているとすると、自民党は参院選に向けて、変わっていないではないかということで、またまずい結果を招くことになるだろう。しっかりと話して、その上で次へ行かなければ、今のままではなかなか生まれ変われない。 <出演者プロフィール> 久江雅彦(共同通信社特別編集委員、杏林大学客員教授。永田町の情報源を駆使した取材・分析に定評。新著に『証言 小選挙区制は日本をどう変えたか』(岩波新書)) 中北浩爾(政治学者。中央大学法学部教授。専門は政治学。自民党の歴史などに精通。著者に『自民党-「一強」の実像』(中公新書)『自公政権とは何なのか』(ちくま新書)など多数) 末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。永田町や霞が関に独自の情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通) (「BS朝日 日曜スクープ」 2024年12月15日放送分よりをもとに構成 ※放送後の政倫審の動きを加筆しています)
テレビ朝日