「中央線グリーン車」はどれだけ“稼げる”のか 特急すらお役御免も問題なし? 驚きの投資効果を試算
グリーン車導入の投資額は約860億円
JR東日本が2025年3月15日(土)のダイヤ改正から、中央線快速と青梅線でグリーン車のサービスを開始します。その一方、都内区間のみで運転される特急「はちおうじ」「おうめ」が廃止されます。 【貴重写真】グリーン車じゃなくて「二等車」を連結していたころの中央線時刻表 グリーン車の導入にあたっては、2階建て車両が57編成分(114両)製造されました。決して小さくない投資です。グリーン車を連結した列車は10両編成から12両編成になりますが、すでに2024年10月から12両編成での運転が始まっており、順次その数を増やしている段階です。なおダイヤ改正までは「グリーン車お試し期間」として、グリーン料金なしで利用できます。 グリーン車のサービスは東京~大月・青梅間で行われ、中央線快速が停車する駅ではホームを12両対応へ改修をしています。さらに、車両基地も12両編成の車両が収容できるように延伸されたほか、車内にはトイレが2か所設置されたため、汚物を処理する施設などを新たに設けています。 この結果、車両の製造費用や改修費用に加え、列車を運行する設備にも多額の費用がかかっています。果たして投資は回収できるのでしょうか。 JR東日本の2023年度の決算資料によると、中央線快速へのグリーン車導入にかかる投資額は約860億円とされています。一方で年間約80億円の増収効果を見込んでいます。グリーン車の導入でどのくらいの収益が期待できるのか、グリーン料金から計算してみました。
むむ、公式発表よりもかなり「稼げる」計算だぞ…?
まず1日あたりの収益は、グリーン料金と利用者数の掛け算で求められます。中央線快速のグリーン料金は、距離の違いや交通系ICカード「Suica」利用の有無で異なりますが、ここでは最も安い50kmまでのSuica料金で750円として計算します。 次に利用者の数は、グリーン車の定員と乗車率、1日あたりの列車本数で計算します。定員は1両あたり90人で、1列車では180人です。また、乗車率は6割と仮定します。列車本数は平日で約580本、土休日で約510本ですが、年間の平日を245日程度として、ここでは1日560本として計算します。 こうして数字を割り当てると、1日あたりの収益は、750円×180人×0.6(乗車率)×560本=4536万円となりました。年間では4536万円×365日=約166億円となります。 先の決算資料によると、年間の増収効果は約80億円としていますので、倍以上の収益と試算されました。この計算では乗車率を6割としましたが、乗車率を約3割として試算するとJR東日本の数値と合うことになります。ラッシュ時間帯は満席になることが予想されますが、早朝・夜間や土休日では空席が目立つことを見込んでいるのかもしれません。 ところで、グリーン車の導入に合わせて廃止される特急「はちおうじ」「おうめ」は、ライナー列車(着席列車)の「中央ライナー」「青梅ライナー」に代わって2019年3月のダイヤ改正で誕生したもので、「はちおうじ」は東京~八王子間で、「おうめ」は東京~青梅間で平日のみ運転されています。いずれも朝の東京方面と、夕方から夜間にかけての八王子・青梅行きの設定です。これらが廃止されると、その分だけ輸送力が削減されることになりますが、グリーン車で「はちおうじ」「おうめ」の輸送力を補うことはできるのでしょうか。こちらも計算してみます。