海外で子育て “日本語教育”に悩む親「子どもが必要性を感じていない」 バイリンガル教育のメリット&デメリットは?
■早期バイリンガル教育は「2つの言語をインプット・アウトプットすることで、違いや類似点を見つけられる」
バイリンガル教育によって「実行機能(認知機能)」が向上するという研究もある。実行機能とは、目標のための計画を立てて達成するために、自分の行動や思考などを調整する脳機能を指す。バイリンガルの人が一方の言語を使うときには、2つの言語が同時に活性化し、もう一方の言語を抑制する。このように脳の認知機能が訓練されると、自分の気持ちを抑え、他者理解の能力を促進する効果があるという。 早期バイリンガルには、大きく4つのメリットがある。言語そのものの性質を考える能力「メタ言語的知識」、異なる人が異なる知識を持っていることを認識できる「社会的認知」、より論理的な「意思決定」、高齢になったときに認知症の発症や、その他の認知機能の低下が遅くなる「加齢と健康」だ。
バイリンガルサイエンス研究所の主任研究員、ポール・ジェイコブス氏は、具体的な長所について「子どもの頃は、文法など考えず、自然に言葉が出てくる。しかし2つの言語を一緒にインプット・アウトプットすることで、言葉の違いや類似点を見つけられる。第3言語も勉強しやすくなる」と説明する。 他者への理解が深まるという研究もあり、「バイリンガル環境で育つ子どもは、『誰に、どの言語で話すか』を判断しないといけない。『この人は1つの言語でしか話せない』『この人はミックスで話せる』と判断しながら育つことで、理解は深まる」と続けた。
■バイリンガル教育の懸念
メリットが指摘される一方で、海外でのバイリンガル教育をめぐっては、日本人の両親から「家の中では日本語で完結できるので、どうしても日本語が強くなり、英語の習得が遅れがち」、あるいは逆に英語に浸かることで「日本語で日常会話は問題ないが読み書きが無理になった」といった声も出ている。
バイリンガル教育の懸念として、複数の言語を習得しているが、いずれも年相応の言語レベルに到達していない「ダブルリミテッド」や、それぞれの言語にふれる量などの影響で、モノリンガルに比べて、一方の言語の語彙力が遅れていくこと、別の言語を学ぶストレスや嫌悪感によって、時間や精神面で子どもへの負担があることが挙げられる。