独自の演目「雌虎」お披露目 “存続の危機”にあった東北の郷土芸能『虎舞』を神戸で継承 活動続ける女性ダンサー「これからもっと磨いていく」
虎舞存続の危機「言葉を失った。何にもないですから」
しかし、虎舞という芸能は存続の危機に立たされたことがありました。 (大槌城山虎舞・総会長 菊池忠彦さん)「だいたいその辺りに保管庫・会館があった感じですね。いやぁもう言葉失いましたもんね、何にもないですから。唯一、太鼓だけがショッピングセンターのほうで見つかったという」 菊池忠彦さんは岩手県大槌町の『城山虎舞』の総会長です。2011年3月11日、津波は大槌町にも押し寄せ、街を呑み込みました。『城山虎舞』では現役のメンバーで亡くなった人はいませんでしたが、1つの太鼓を除いてすべてが津波に流されました。絶望的な状況の中、菊池さんはあえて“こんな時だからこそ虎舞を続けよう”と思ったといいます。 (菊池忠彦さん)「これは復活は難しいんじゃないかなという思いはありました。でも、いま皆さんに、被災している我々も含めてみんなに必要なのは、震災前から脈々と続いてきたもの。いろんな意味で前向きにいかないといけないので、そのはずみになったのがやっぱり郷土芸能、虎舞。我々が小さいころから慣れ親しんだものをずっと続けていくことで、気持ちはすごく前向きになりましたよね」
「虎舞をきっかけに震災を思い出して“備え”につながったら」
道具を作り直したり、他の虎舞の団体から譲り受けたりして活動をすぐに再開。被災者を勇気づけました。いはらさんら、関西のダンサーたちから“自分たちも虎舞を演じたい”という話をもらった時、戸惑いもあったものの、虎舞を通じて記憶の風化に抗えるのではないかと思ったといいます。 (菊池忠彦さん)「関西の方々がこの虎舞を見た時に、“これは何なの?”“岩手県の三陸に伝わる郷土芸能らしいよ”“三陸といったら東日本大震災で被害の大きかったところでしょ”と、そこで震災とか津波とかそういう部分を思い出していただいて、備えなきゃいけないよね、という所につながっていってもらえたらいいなという思いはすごくあったんですよね」 いはらさんが神戸で虎舞を続けるその根源は“楽しさ”であり、観る人を楽しませたい思いです。けれども、災害の記憶、災害を乗り越えた記憶を郷土芸能を通じてつないでいることも、自覚しています。 (いはらみくさん)「(震災の記憶を)絶対に忘れないように、こっちでも取り組もうというのはすごく思っていて、時間とともに風化してしまうものはあるんですけど、そういった初心は絶対に忘れないようにしようと思いながら、ずっと活動自体は続けています」