阿炎に、寺尾に負けた…大の里が大関初黒星 後手に回り勢いの差歴然 目を閉じ「また明日から」
<大相撲九州場所>◇4日目◇13日◇福岡国際センター 先場所2度目の優勝を果たした大の里(24=二所ノ関)が、大関として初黒星を喫した。東前頭3枚目の阿炎に、立ち合いから主導権を握られ、最後はすくい投げ。先場所千秋楽に続いて阿炎に敗れ、初日からの連勝は「3」で止まった。06年夏場所の白鵬以来、18年ぶりの新大関優勝を目指す中、大関豊昇龍ら全勝の4人を追う展開となった。 ◇ ◇ ◇ 迷いが出足を鈍らせた。大の里の立ち合いは、踏み込みが浅かった。阿炎は立ち合い変化も繰り出すくせ者。さらに先場所敗れた、悪いイメージが残っていても不思議はない。下から相手のもろ手突きをあてがう意識が強く、無意識のうちに慎重に立っていた。所要9場所の最速大関昇進へと導いた、立ち合いの圧力は全くない。迷いなくもろ手で突いてきた相手との勢いの差は歴然だった。後手に回り、慌てて出たところをすくい投げで転がされた。 取組後は目を閉じて「切り替えて頑張ります」と話した後に「また明日から」と、自らに言い聞かせるように繰り返した。18年ぶりの新大関優勝は1歩後退した。新入幕の初場所から今年は59勝を挙げてきた。トップを走る年間最多勝争いでも、前日3日目に2位の琴桜が敗れて5差に広げたがこの日、琴桜が55勝目を挙げ、再び4差となった。 阿炎に負け、そして寺尾に負けた。昭和、平成と活躍し、昨年亡くなった元関脇寺尾の先代錣山親方は、阿炎の入門時からの師匠。果敢に突っ張る取り口は、師弟に共通する。さらに阿炎が取組後に勝因に挙げたのは「(先代)師匠も右四つがあったから」と、約3年前から取り組んだ右四つが生きた点。最後は右からすくって転がされた。何よりも寺尾を思わせる気迫が阿炎に乗り移っていた。 それでも落ち込んでいる暇がないことは、2度の優勝で大の里自身が分かっている。「1日1番に集中するだけ」。勝っても負けても変わらない言葉。ただ、3日目まで以上に力説。逆転優勝への思いをにじませていた。【高田文太】 ▽八角理事長(元横綱北勝海) 大の里は受けてしまった。顎が上がり、足がついていかなかった。まだこれから。豊昇龍は攻め込めていた。前に出る意識があるから流れが生まれる。琴桜はがっちり受け止めた。右が入ったのが良かった。