外国人登山者向けのガイド養成へ 信州の魅力伝達や遭難時対応が目的
長野県と国交省は、外国人登山者向けのガイドを養成する取り組みが始まっています。8月までに「養成研修」の参加者を募集し、9月にかけて実技研修を行います。同県は北アルプスなどを擁する全国有数の山岳県として、外国人登山者や観光客が増加。しかし言葉の壁などでガイドの態勢は十分とは言えず、遭難防止の指導、緊急時の対応なども迫られています。十分な英語力を持ち、救命処置ができて登山技術があることなど、養成研修には厳しい参加資格が求められています。
英語力や登山技術、救命の知見
県内を訪れる外国人登山者の詳細は不明ですが、県警などによる山岳遭難の統計では昨年、韓国、中国、台湾、イギリスなど7か国の27人が山岳遭難で救助されるなどしています。このうち韓国、オーストラリアは各8人と多く、韓国では日本のアルプス登山が10数年前からブームともいわれます。 上高地などを訪れる台湾、中国、東南アジアの一般観光客も最近目立っており、夏でも雪をいただく日本の3000メートル級の山岳地帯は外国人の観光の目的の一つです。 しかし言葉の壁もあって、外国人観光客に信州の自然の魅力を十分伝える機会はこれまで不十分でした。また外国人の山岳遭難など緊急時に素早く対応するためにも、コミュニケーションが取れる人材の養成が期待されてきました。 「外国人登山者のためのガイド養成研修」は、長野県と国交省北陸信越運輸局が連携して計画。8月から9月にかけて座学のほかアルプスを歩く実技研修も実施。定員30人、8月14日締め切りで募集しました。 参加資格は、▽語学、▽登山関係の資格・技量、▽救命講習の資格を満たすことが必要。語学の場合は、(1)全国通訳案内士または地域通訳案内士(英語)の資格があること、(2)英検準2級以上またはTOEIC650点相当以上の資格があること、(3)海外居住経験者で、英語でのコミュニケーションが十分とれること――のうち1つ以上当てはまることが必要です。 登山関係の条件は、信州登山案内人または日本山岳ガイド協会会員であるか、登山技術を有する人。 救命講習の条件は「通報や救命処置が必要か評価でき、止血やCPR&AED実技を伴う救命講習を受講し、有効期限内の資格を持っていること、または本年中に取得予定のある人」としています。 実技研修は、9月に北ア、中ア、南アで2泊3日の山行を予定し、このうち1コースに参加することが必要。乗鞍岳、木曽駒ケ岳、仙丈ケ岳などが含まれ、小屋泊まりになります。