革新と普遍を併せ持つ10組の共演、「ツタロックDIG LIVE vol.16」現地レポ
ブランデー戦記、雰囲気をガラッと変えた轟音
ボリ(Dr)は登場するやいなや会場を広く使って煽り、みのり(Ba.Cho)は一礼、蓮月(Gt.Vo)はピンクが印象的な衣装で目を引く。眩しい逆光の中、1曲目はギターの弾き語りで始まる「Coming-of-age Story」。そのザラついた感触があるロックンロールにフロアも手を上げて応えるが、先ほどまで続いたポップな雰囲気とは変わる。最後にギターを静かに鳴らし「よろしく」と蓮月が言った後の拍手に続いたのは「Musica」。やはりこの曲の持つ、音楽リスナーに与えるニュース性は唯一無二だ。子供の純真性と大人の色気を表したような、水色とピンクの強いバックライトもこの曲でないと似合わない。蓮月が前に出てギターを弾き、フロアを見渡す場面もあった。3曲目「Kids」はまず蓮月とみのりの息の合ったギターとベースのイントロに息を呑む。そこからさらに鋭度を増したサウンド。みのりのコーラスでもしっかり捕まえて、そのギザギザなロックサウンドを素肌にぶつけてくる。ボリのドラムの程良いシンバルの甲高い音も、さらに攻撃力を高める。 感謝を伝えた短いMCの後、「悪夢のような」で非現実感に没入させられて、どこか時間の感覚を忘れそうになる。それを目覚めさせるようなドラムが鳴り「二十日(11/20)リリースされる新曲をやります」と言い「27:00」を初披露。彼女達らしいダウナーさや無常感の味わいがありながら、非常に肉体的な疾走感があるナンバー。会場のボルテージを上げたのは書くまでもない。そのままみのりのベースと会場のクラップが合わさって一体感が高まった後、それを吹き飛ばすような強烈なギターを鳴らして「ストックホルムの箱」へ。スリーピースだからこそ出せる爆音と、やはり蓮月とみのりの歌声のハーモニーは曲の持つ感情の幅を広げていて、このバンドの持つ大きすぎる武器であることを証明する。そしてラストは「僕のスウィーティー」。僕らは破滅に向かう暴走機関車に乗せられていることに気付く。制御不能な車輪が轟音を立てながら猛スピードで駆け抜けていく。3人はというと蓮月も最後は倒れながらギターを弾き、フィニッシュ。 一応、会場出入り自由のイベントではあったが、そこまで終始大きく客層は変わってなかったはず。だがこのバンドが演奏を終えた時に上がる歓声は今までとは違ってどこか狂気を引き出されたように聞こえたし、それは邦ロックというよりは海外のライブの雰囲気も漂っていた。 <セットリスト> 1. Coming-of-age Story 2. Musica 3. Kids 4. 悪夢のような 5. 27:00 6. ストックホルムの箱 7. 僕のスウィーティー