革新と普遍を併せ持つ10組の共演、「ツタロックDIG LIVE vol.16」現地レポ
Chevonのエースストライカーは君でもある
トリを務めたのはChevon。本日のイベントというだけでなく、実はツタロック10周年を飾るイベントのトリということでもある。本人達も「大トリってもんを見せに来た!」と気合を見せる。 Chevonは谷絹茉優というボーカルが圧倒的な声量と音域を誇り、そのキャラクターもあって注目が集まりがちだが、ライブではKtjm(Gt)、オオノタツヤ(Ba)、サポートドラム、そして観客との一体感で迫ってくる圧力のほうが印象に残る。それはまるで強豪サッカーチームの雰囲気で、実は点取り屋は谷絹だけでなく、フロア側も大部分を担っているように感じた。ただその谷絹から出されるパスがミュージシャン史上一番容赦ないかも! この日も何度も「こんなもんじゃないでしょ!」「あんたら最近たるんでるから一番大きな声聴かせろ!」「暴動を起こせ!」とドSなパスをフロアへ何度も出す。Ktjmやオオノも和やかな雰囲気に見えて、Ktjmはライブの展開を変えていく正確すぎるセンタリング(ギタープレイ)で何度も盛り上がりを演出してるし、オオノはベース演奏はもちろん、また谷絹の歌声とは違った魅力あるコーラスで曲の魅力を崩さず、むしろ押し上げている。そうやってできたお膳立てを谷絹の常人離れした肺活量で派手にシュートを決めるシーンも勿論ある。しかしそのハイレベルなお膳立てに120%で応えようと「大行侵」の重厚なサウンドに負けじと会場を揺らしたり、<冥冥!><正義、正義!>と声を張り上げるフロアこそが最大のChevonの武器だと感じた。 ただこの日は中盤から「薄明光線」「愛の轍」とバラードをしっかりと聴かせるパートも。加えて「ツアーを通じて思ったんですが、この曲は大事に歌ってみたいなぁと思いました。だから今日は大事に歌ってみたい」と「サクラループ」もスタンドマイクでいつかの春を懐かしむかのように歌っていた。その谷絹の目や指は変わらず力強く、Ktjmのギターソロもあって、美しき愛で会場は包まれた。 ただ「奥の方まで見えてるからね!」という「ダンス・デカダンス」、そして「アンコールはありません! ここで全部出し切ってください!」とラストの「Baquet」で150%のアドレナリンを互いに出していく。谷絹は最後まで煽るが、ここではオオノが煽る場面も。そして最高のエネルギーを充満させ「よくできました、O -EAST!」とピースを掲げながら谷絹は伝え、万雷の拍手の中「これからもどうぞよしなにー!」と絶叫して約束し、ツタロックDIGライブVol.16は終了した。 <セットリスト> 1. 大行侵 2. 冥冥 3. 光ってろ正義 4. 薄明光線 5. 愛の轍 6. サクラループ 7. ダンス・デカダンス 8. Banquet 今回は令和以降、独自のクリエイティブやPOPセンスをバンドに落とし込み、バンドによってはインターネットもしっかり活用しながら発信するという出演者の色が目立ったと感じる。 そういった新しいバンドの戦い方、新しいバンドの自由な在り方を提示しながらも、いつの時代も変わらないライブで必要な制圧力や巻き込む力も持っている。振り返ると、新世代はここから始まっていたと、そう思えるような日になったに違いない。 <イベント情報> 「ツタロックDIG LIVE Vol.16」 2024年11月9日(土)Spotify O-EAST 出演:Chevon、G over、ハク。、pachae、ブランデー戦記、名誉伝説、yutori、レトロリロン、606号室、ミーマイナー 主催・企画:CCCミュージックラボ(株) 制作:ライブマスターズ株式会社 協力:Rolling Stone Japan
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