売春をはじめた娘の葛藤…観光でラスベガスを訪れ働くことを決意した「壮絶な人生」
安心して働くために「売春宿」へ
ネバダ州民として13年半、オレゴン州で2年弱、カリフォルニア州で3年強生活する筆者だが、<トップレス・カー・ウォッシュ>なる職を耳にしたことは無かった。 「ノースキャロライナ独特のビジネスなのよ。当地でも、そういう店は1箇所だけだった」 グレイは必死に貯金し、22歳の誕生日に観光でラスベガスを訪れる。 「その時、ベガスで何か仕事がないかとリサーチしてRanchの存在を知った。最初、レンタカーでこことは違うRanchを訪ねたの。色々聞きたかったし、どんな業務体系なのかを知りたかったんだけど、『今、営業していないから面接は無理だ』って、にべもなく断られた。まぁその時は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、全てのRanchが営業していなかったんだけどね。あの言い方は、ショックだったな。 で、Chicken Ranchに連絡を入れてみたの。担当者の対応がとても紳士的だった。雇用内容やルールなども丁寧に説明してくれて、ネットで内部の様子も細かく教えてくれた。だから、『ここなら安心して働けるな』って感じた。それで、パンデミックが明けて営業再開となった2021年5月から、所属するようになった」 とはいえ、グレイは本連載で数日前に紹介したエアフォース・エミーのように、トップ娼婦になってやる!という種の野心家ではない。それは、Ranchでの働き方にも表れていた。それまでの人生から「逃れる」ためにRanchを選んだのだとしたら、売春ビジネスに安らぎを求めたのか。 後編『売春宿で働く“親子”が決断した「納得の理由」…25歳娘がアメリカ社会に抱く「激しい怒り」』で、詳しく語られる。
林 壮一(ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属)