米の一生 独自の舞に 文科大臣賞の沖縄県立八重山農林高校
伝統民謡も織り交ぜ20年超
沖縄県立八重山農林高校(石垣市)の郷土芸能部は、地域に伝わる歌と踊りで米の発芽から収穫など五穀豊穣(ほうじょう)を独自に表現する演舞を20年以上続けている。今年の生徒らが作った演目「米ぬ為し(まいぬなし=米のために)」は、全国高校総合文化祭の郷土芸能部門で最高の文部科学大臣賞を受賞。新しい演目も出来上がり、農業を軸とした郷土文化の継承に力を入れる。 【動画】八重山農林高校「米ぬ為し」の練習風景 キユーガピーバ(今日の日)、クガニピーバ(黄金の日)――。 八重山地域に伝わる言葉で始まる「米ぬ為し」は、「ウヌカフドゥ(この果報ぞ)ニーフィーガヨールーヨー(願っている)」など、八重山の言葉の歌詞が数多く出てくる。 舞台で踊る生徒らは、かつて地域の農家が農作業中に着ていた着物、かさを身に着ける。民謡の音色に合わせて、田植えや草刈り、刈り取りの動きをしながら歌い踊る。 音楽は地謡(じかた)と呼ばれる役の生徒らが担当。歌いながら三線や太鼓、笛を使って民謡曲を奏でる。 部長を務める同校3年の嵩田晄さん(18)は「農作業のように腰を落とす姿勢も多いので体力的にはきついけど、みんなで歌い、踊っていると一体感を感じる」と話す。 一連の演舞は、八重山地域で古くから農作業中に歌われてきた民謡に、踊りを組み合わせている。 同部出身でもある顧問の新城舞教諭は「基本的な歌と踊りは、20年以上前から校内で受け継がれてきた」と説明。衣装も代々先輩から引き継いだ品を使い続けている。先輩やOBが指導し、農家ら地域住民からの助言も受けつつ「農作業をしているように見える踊り」(新城教諭)を長年追求してきた。 数多く存在する民謡を伝承するため演舞の内容は毎年、生徒らが考える。「米ぬ為し」は、部の自主学習で地域に稲作文化が広まったことを学んだことから、その文化を踊りとして表現した。 「米ぬ為し」は今夏、鹿児島県で開かれた全国高校総合文化祭で文科大臣賞を受賞後、8月末には東京の国立劇場でも披露した。11月の県高校総合文化祭では、新演目「世果報給り(ゆがふたぼらり)」を披露した。(小林千哲)
日本農業新聞