V10エンジンだけで1000馬力超! さらにモーターをプラス! ロダンのハイパースポーツカー「F ZERO」がみせる衝撃の世界!!
「考える人」のロダンの名を冠した新興メーカー
多くの人は、「ロダン」という名前から何を想像するだろうか。もっとも多い答えは、やはり「考える人」の作者として知られる彫刻家、「オーギュスト・ロダン」だろう。 【写真】見た目もスペックもハンパない! ロダン「F ZERO」の詳細(全18枚) 1996年、スポーツ志向の高いカスタマーに、至上のトラック走行を実現させるためには何を開発したらよいのか。「ロダン」の名を社名に掲げた創立者のデイビッド・デッカーは、ひたすらにその答えを考え続けていた。 2005年になると、デッカーはニュージーランドのカンタベリー北部にあるワイアウから12kmほど離れたワンダルタウンズの街に土地を購入。平坦な土地と起伏のある土地、さらにそれは素晴らしい自然環境が整った場所だった。そしてニュージーランド南島最大の都市、クライストチャーチにも近い立地は、彼の夢を実現するための材料や人材を確保するためにも最適なものだったといえた。 翌2006年には車両と部品を補完するための新たな建物と本社施設が完成し、2012年には最初のテストコースも完成。2014年には第二のテストコースの建設も始まった。 そしてデッカーは、2016年に最初の従業員を採用、同時に2012年にロータスが発表した、ほぼF1マシンともいえるプロトタイプ「T125」を購入(ロータスは当初25台のT125を販売する予定だったが、実際にデリバリーされたのは5台のみだった)。その技術的ノウハウをベースに、さらに魅力的なトラックカーを製作しようというプロジェクトが正式に立ち上がったのである。 2016年のカイコウラ地震では大きな被害を受けたロダンだったが、そこからの復旧は早かった。2020年には第二のテストコースを改修するとともに、第三のテストコースを新設、エンジニアリングチームと生産チームのすべてが配置される大規模な専用施設も新たに建設された。
もはやフォーミュラのハイパースポーツ「F ZERO」
そのロダンが、現在セールスの主軸においているのは、「F ZERO」と呼ばれるフォーミュラーカー風のハイパースポーツだ。レースのレギュレーションにも、そしてもちろんオンロードでのさまざまな規制にも左右されない、自由なデザインとエンジニアリングで完成されたそれは、見た目にもダイレクトに速さを感じさせるもの。 全長が5500mm、全幅が2260mmというボディは、もちろん軽量なCFRP素材で成型されたもので、フロントとリヤ、そしてフロアウイングには大型のエアロダイナミックパッケージが装備されている。ダウンフォースの最大値はじつに4000kg。最高速の360km/h付近での安定感は、このダウンフォースによって高いレベルに導かれている。 ミッドに搭載されるエンジンは、「ロダン RC.TEN」と呼ばれる、4リッターのV型10気筒ツインターボ。これにエレクトリックモーターをクランクシャフトに直結し、さらなるエクストラパワーを得る。 鍛造アルミニウム製のシリンダーブロックおよびヘッド、鍛造アルミピストン、スチール製のクランクシャフトを有し、燃料供給は200barの燃料圧システムによる10本のダイレクトインジェクターによって行われる。潤滑方式はもちろんドライサンプだ。 V型10気筒エンジンの最高出力は1013馬力。最大トルクは700Nmと発表されており(これにエレクトリックモーターの174馬力が加わる)、このエンジンはロダンとリカルドの共同開発によるドグクラッチ式の8速セミオートマチックミッションと組み合わされる。 ギヤシフトはパドルによって実行され、シフト時にはオートスロットルブリップ、点火カットなどの制御も入る仕組みだ。また、クラッチは4プレートのカーボン製とこちらも耐久性に優れる。 サスペンションは前後ともにダブルウイッシュボーン、プッシュロッド式コイルオーバーというデザインで、軽量な結合チタンやカーボンアームを積極的に使用するなど、バネ下重量の低減には相当に意欲的だ。ホイールはOZレーシング製だ。 ロダンによれば、このF ZEROを購入したカスタマーには、さまざまなサーキット体験プログラムが用意されているという。ロダンのテストコースでのトレーニングプログラムのみならず、カスタマーの希望によってはワールドクラスのサービスを提供することも可能だ。それは走りにこだわるエンスージアストにとって、非常に魅力的な選択、そして経験となることは確かなところだろう。
山崎元裕