<春に挑む・’23センバツ・大分商>/上 打撃編 「長尺」バットで手応え /大分
「わっしょい!」。寒風が吹くグラウンドで1月中旬、選手が白い息を吐き、素振りをしていた。持っていたのは試合で使うバットより約12センチ長く、約400グラム重い。力を込め、理想の打撃フォームを追究していた。 この練習は、腕の力ではなく、体の軸を回転させて打つこつを教えるためのもので、2022年8月に就任した那賀誠監督(55)が取り入れた。選手たちは特別に作ったバット、通称「長尺」を使っている。 那賀監督は「打撃のレベルが上がれば、相手の守備位置が下がり、ヒットの確率が上がる。全国大会で勝負するには打撃の強化が欠かせない」と語る。体の軸を意識して打てるようになれば、試合用のバットを使った時にヘッドスピードが上がり、強い打球が打てるようになるからだ。 練習成果は選手も感じている。22年秋の九州地区大会の1回戦では、神村学園(鹿児島)に10―0のコールド勝ちした。この試合で3打数2安打と活躍した渡辺公人(2年)は「長尺を使う練習のおかげで普通のバットが振りやすく、スイングスピードも上がったと思う」と振り返った。 ただ、課題も見つかった。準決勝の長崎日大(長崎)戦。相手投手に6安打に抑えられた。5番の江口飛勇(2年)は「相手の直球とスライダーの見分けがつきにくく、ボール球を振らされた。変化球に対応できるバットコントロールを磨き、スイング力を上げないといけない」と省みた。 選手が取り組むのが下半身を中心とした体の強化だ。「身長マイナス100」の体重を目標に、50~100キロのベンチプレスを挙げたり、20キロの鉄の棒を肩に担いでジャンプをしたりする。4番の羽田野颯未(かざみ)(同)は「パワーが増し、飛距離が伸びた」と語り、紅白戦で本塁打を放つなど手応えを感じている。 3番で主将の大道蓮(れん)(同)は「甲子園は140キロを超える投手ばかりなので、打ち負けない打撃を鍛えていきたい」と闘志を燃やした。【神山恵】 ◇ ◇ 第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に3年ぶりに選ばれた大分商の選手たちが課題の克服に向けて、挑戦する姿を3回に分けて報告します。