安田顕、田沼意次から平賀源内に“転身” 『大奥』の怪演から『べらぼう』渡辺謙との対峙へ
さまざまな舞台や映画、そしてドラマで変幻自在に幅広い役を演じてきた安田顕が、2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で、平賀源内役を務めることが発表された。 【写真】エレキテルを触る平賀源内(安田顕) 平賀源内は、中国の薬物学(本草学)を専門にしながら地質学や蘭学にも明るく、さらに江戸時代に流行した通俗小説や人形浄瑠璃の作者、俳人としても活躍。また、長崎で手に入れた静電気発生装置・エレキテルを修理したことでも知られている。そのジャンルを超えた多才さから「日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と称されることもある。 江戸時代やその文化を語る上で重要な人物であるだけに、源内はこれまでにも多くのドラマで登場してきた。本作で、吉原の引手茶屋(客に遊女を紹介する案内所)“駿河屋”の主を演じる高橋克実は、山口崇が演じた源内が主人公の痛快時代劇『天下御免』(1971年/NHK)を印象的なドラマとして挙げている(※)。 また、本作で脚本を担当する森下佳子が脚本を手がけた男女逆転の『大奥』(2023年/NHK総合)にも鈴木杏演じる源内が登場。この時の源内は国中に蔓延していた赤面疱瘡の治療法を確立しようと奔走しており、持ち前の好奇心と行動力で軽症患者からの人痘(=ワクチン)接種法を成功させている。チャーミングかつひょうきんでありながら、天才的な頭脳と独特な目線で世の中を見る観察力を持ち、圧倒的な行動力で奇想天外なことも実現させていった源内。安田がそんな彼をどのように演じていくかに期待が高まる。 本作の主人公で、横浜流星が演じる蔦屋重三郎(蔦重)は、“江戸のメディア王”として知られており、喜多川歌麿、葛飾北斎、滝沢馬琴など江戸時代の文化人として今も知られているような人たちを世に送り出したとされている。蔦重と源内の関係を史実から調べていくと、その関係は意外と深い。地元・吉原で書店を始めた蔦重が、その頃取り扱っていたのが吉原遊廓の案内書・吉原細見。店ごとに遊女の名を記したものと言われているが、蔦重はその吉原細見の序文を源内に執筆してもらっているのだ。当時、源内は江戸の世に名が知れ渡っていた有名人だったため、もちろん彼の起用は大きな話題に。蔦重を“プロデュースの天才”と考えるならば、この吉原細見と源内の組み合わせは、最初にヒットしたプロデュース作品といえるのかもしれない。つまり、蔦重にとって源内との出会いは、その後の運命を決定づける重要なものとなる。 このエピソードだけでも、ドラマの中で2人の関係性がどのように描かれていくのかが楽しみになるが、もう1人、蔦重と源内に関わる、欠かせない登場人物がいる。それが本作では渡辺謙が演じる田沼意次である。源内は秩父で石綿(アスベスト)を発見し、これを使って耐火織物を作って幕府に献上。それ以前から源内のことを知っていた田沼は、源内の才能に惚れ込み、長崎に遊学させたり、鉱山開発学ばせたりと特命を託して、「国益」を念頭に置いての活動をさせている。 田沼の名を聞くと、小芝風花主演の『大奥』(2024年/フジテレビ系)での安田の演技を思い出す人も多いだろう。安田は、10代将軍・家治(亀梨和也)の家臣という立場でありながら、裏で家治を陥れようと目論んだり、かと思えば正面から脅したりと権力を手に入れたい欲望にかられ、幕府を意のままに操ろうとしているかのような田沼を怪演。亀梨和也演じる家治が将軍とは思えない繊細さを見せていたことも相まって、安田が演じた田沼はその“怖さ”が際立っていた。それがあるだけに本作では、渡辺が演じる田沼と源内の関係性がどのように描かれるのか、そして安田が田沼の前でどんな源内を演じてみせるのかも見どころとなるのではないだろうか。 ■参考 ※ https://realsound.jp/movie/2024/02/post-1579922.html
久保田ひかる