トランプ再選で日本経済に迫る危機、まるで予想がつかない「矛盾」とは
長期的にはドルの価値が下がる可能性も
今、説明した内容は基本的な経済のセオリーに沿ったものだが、そうとは限らないところがトランプ政権の特徴である。トランプ氏は片方ではインフレを悪化させる政策を矢継ぎ早に打ち出しているものの、一方で、インフレ抑制のカギとなる中央銀行を激しく批判している。 トランプ氏はFRBのパウエル議長を度々攻撃しており、金利の引き下げを要求する可能性もあるとしている。そうなるとインフレが止まらなくなるリスクが高まってくる。トランプ氏の主張は完全に矛盾したものだが、このあたりについてトランプ氏が現実問題としてどう判断するのかまったく予想がつかない。 米国でインフレが進み、これをうまく制御できなかった場合、最終的にはドルの価値減価という形で辻褄を合わせる必要が出てくる。そうなると、一旦は進んだ円安ドル高が逆転し、円高ドル安の流れが発生してくる可能性も十分にあり得るだろう。 トランプ氏の政策は相互矛盾が多く、かつ、どの政策を優先するのか予想がつかないという点で極めて不確実性が高い。短期的な影響と中長期的な影響が大きく乖離する可能性があり、日本側はこの点についても十分な警戒が必要となる。
執筆:経済評論家 加谷 珪一