トランプ再選で日本経済に迫る危機、まるで予想がつかない「矛盾」とは
日本の空洞化がさらに進む
仮にトランプ氏が一連の政策を実行に移した場合、日本企業は米国への輸出において極めて不利な状況に追い込まれる。仮に10%の関税がかけられた場合、日本製品の価格は高くならざるを得ない。多くの企業が、売れ行きが悪くなることを覚悟してでも米国への輸出を継続するか、米国内での現地生産に切り替えかという選択を迫られるだろう。 日米間については、80年代から貿易摩擦が存在していたこともあり、日本メーカーは積極的に米国の現地法人化を進めてきた。結果として米国を主な生産拠点とする企業も多くなっているが、トヨタのように国内製造拠点を維持している企業もあるほか、現地生産に切り替えても、調達する部品については日本からの輸入に頼るところも多い。こうした企業の場合、国内生産拠点の撤収を迫られたり、部品輸出の減少という問題に直面するだろう。 現地生産に切り替え、部品の調達がスムーズに実施できれば、企業の業績自体は悪化しない。だが、日本国内の生産拠点がなくなるため、国内産業には空洞化の懸念が出てくる。加えて、輸出が減少するため、対価として米ドルを受け取る取引が消滅してしまう。これは実需の円買い減少を意味しており、円安が進みやすくなる作用をもたらすことになる。
来年、日本では値上げラッシュが再来する?
一方、これらの通商政策は米国経済にどのような影響を及ぼすのだろうか。 関税が課されれば輸入製品の価格が上昇するので、米国内の物価を引き上げる作用をもたらす。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が量的緩和策を推進してきたこともあり、米国ではインフレが進んできた。FRBは金利を引き上げることでインフレに対処しようとしているが、利上げが進みすぎると景気を悪化させるので、FRBは利上げを打ち止めした状態にある。 だが、トランプ政権が高関税をかけた場合、インフレ圧力が高まるのは確実であり、FRBはやっかいな状況に置かれる。さらに言えば、トランプ氏は不法移民の強制排除も実施するとしており、移民がいなくなった場合、低賃金労働に従事する労働者が減少するので賃金上昇が見込まれる。賃金上昇は関税と同様、国内経済においてはインフレ圧力となり、物価上昇がさらに激しくなるかもしれない。 基本的なセオリーで考えた場合、インフレが加速する時には、中央銀行は利上げを実施するはずなので、日本と米国の金利差が再び拡大し、円安ドル高が進展するというのが短期的かつ一般的な見立てといって良い。 実際、トランプ氏の当選が決まって以降、為替市場では円安が進んでおり、市場は円安を織り込み始めている。円安が進んだ場合、日本の輸入物価は再び上昇に転じることになり、国内の物価も上がる可能性が高い。場合によっては、来年以降、再び値上げラッシュに悩まされることになるだろう。