2度の五輪に出場・鈴木明子氏が明かす宇野昌磨が「世界選手権フリーで失速した理由」と「去就」
3月24日までカナダ・モントリオールで争われたフィギュアスケート世界選手権。女子は坂本花織(24)が日本勢初の3連覇を果たしたが、男子で3連覇を期待された宇野昌磨(26)はフリーで失速し、4位に終わった。 【画像】すごいラブラブ…!本田真凜&宇野昌磨「恋人つなぎデート」現場写真…! ’10年バンクーバー五輪、’14年ソチ五輪に日本代表として出場し、いずれも8位入賞を果たした解説者の鈴木明子氏に「宇野が失速した理由」を聞いた。 ――ショートプログラム(SP)では4回転フリップ、4回転トーループを完璧に決めて、スピンとステップでも最高評価。107.72点をマークし、今季の世界最高得点をたたき出しました。それだけにフリーでのミスが悔やまれます。 「宇野選手は1位でフリーを迎えることになりましたが、ジャンプの感覚の少しのズレが本番に出てしまったように見えました。少しのズレでも複数あれば、その綻びがジャンプだけの減点ではなくて、演技構成点やプログラムの評価の部分にも影響を与えます。いまいち点数が伸びなかった原因はそこにあるのではないでしょうか」 ――「ジャンプの感覚のズレ」とはどういったものでしょうか。 「非常に難しい部分ではあるんですけれども、短期間でもジャンプの感覚には微妙なズレが生じるんです。とくにジャンプは、一瞬で成功か失敗かが決まる。SP本番の演技を見る限りはいいジャンプを飛んでいました。ところが、フリー本番を迎えるにあたって少し感覚が実際の身体の動きと噛み合わなかったのかなと」 ――フリーの前の練習から「ループもフリップもミスしても仕方なかったかな」と宇野本人も感じていたようです。ショートとフリーのわずかな間で感覚が狂ってしまうフィギュアスケートの怖さを感じます。 「競技の日にピークを持ってくる難しさを、今回の宇野選手のフリーの演技を見て改めて感じました」 ――3連覇のプレッシャーが、重くのしかかっていたのでしょうか? 「それはあまり感じていなかったと思っています。勝ち負けや点数より、自分が練習してきたことを本番でどれだけ出せるかを追い求めている選手ですから」 ――会見で宇野選手が「すがすがしい気持ち」と発言したことで、今後の進退が注目されています。 「3連覇できなかったからという結果は関係なく、宇野選手自身がどこに目標を持てるかだと思います。アスリートにとって『何のために競技を続けるのか』が明確でないと、選手生活を続けていくことはできません。彼が次に何を見据えているか、何をもって『やりきった』と考えるか。これは選手によって千差万別です。結果にフォーカスする選手も、そうでない選手もいます。自分がやりたいスケートは何なのか、もし追い求めることが競技ではなくプロに転向してもできることならば、違うステージに行くことは十分あり得るのではないでしょうか」 ――今回、世界選手権で初制覇を果たしたアメリカのイリア・マリニン選手(19)に話が及ぶと、彼と同じ世代の選手の名前を挙げて「頑張ってね」と発言していました。やはり一線は退くのでしょうか。 「まだ選手としてやってみたいことがあったり、今回メダルを取った選手たちをさらに超える演技がしたいという気持ちがあるなら、戦いの場所は競技になります。モチベーションがどこにあるかは本人のみぞ知ることですから。徐々に、しっかり自分の中で考えができあがっていくものでもあります」 ――そこは本人のみぞ知る部分ですね。 「私は選手を続けることも、引退することもどちらも大きな覚悟がいることだと思っています。中途半端な気持ちで競技を続けることはできません。宇野選手はメダルや連覇などの成績に軸を持っていないタイプだと思います。それだけに今後、何を求めるかは未知数。私としては宇野選手のタイミングでしっかりと考えて出した答えを尊重するだけ。その結論を応援していきたいと思います」 一時代を築いただけに、宇野は20代半ばで難しい判断を強いられることになった。「順位にこだわらない男」の決断やいかに。
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