現場近くの小学校、4分の1の児童が欠席 北九州2人死傷、広がる不安
北九州市小倉南区のファストフード店で14日夜に中学生の男女2人が男性に刺されて死傷した事件では、男性が現在も逃走中で、地域の住民や子どもたちに不安が広がっている。 【図解】2人が刺された時の店内の状況 現場の西約350メートルにある市立広徳(こうとく)小学校では16日午後、警察や地域のまちづくり協議会のメンバー、教職員らが通学路に立ち、下校する児童たちを見守った。車などで子どもを送迎する保護者も多く、小学2年の息子を迎えに来た母親(37)は「近くで事件が起き、ショックだった。明日からは仕事で迎えに行けないので、登校させるかどうか迷っている」と不安げに話した。 同小によると、この日は全校児童348人の約4分の1に当たる83人が欠席した。「子どもが『怖い』と言っている」「学校への送迎ができない」などの理由だという。土田成夫校長は「登校した児童も教室に鍵を掛けたりするなど不安な様子だった。子どもが日常を取り戻すことを第一に考えたいが、犯人が捕まらなくては難しい」と話した。 市教委によると、被害生徒が在籍している中学校は16日は休校し、17日から再開する。ただ、通常授業はせず、アンケートや全生徒への面談を実施するなどして生徒の心のケアにあたる。日没後の下校を避けるため、当面の間、全ての市立小中学校の児童・生徒を午後5時までに下校させる。 福岡県警は16日から、登下校中や夜間帯のパトロール態勢を強化。登下校中は学校周辺に制服を着た警察官を配置したり、白バイが巡回したりするほか、ヘリコプターを飛ばし上空からも目を光らせる。夜間もパトカーなどが赤色灯をつけて見回る。警戒のため、1日当たり100人超の警察官を投入する。 子どもたちの不安に保護者や周囲の大人たちはどう対応すればいいのか。東京学芸大の小林正幸名誉教授(教育臨床心理学)は「子どもの恐怖や不安を助長しないように、大人は冷静に受け止めて子どもと接することが大事だ」と話す。児童・生徒が登校を嫌がる場合は無理に行かせず、学校側も子どもがリモートで授業を受けられるようにするなど柔軟な対応が必要と指摘する。 日常生活でも食べ過ぎたり、眠れなかったりなどSOSが表れることがある。小林名誉教授は「子どもっぽくなるなど、普段とは異なる行動があっても、一方的に否定せずに様子を見てほしい」とする。時間がたってから言動に表れる場合もあり、「子どもに『不安に思ったらいつでも教えて』などと伝えながら見守ってほしい」と呼びかけた。【山下智恵、田崎春菜、河慧琳】