変化恐れず、進化求めるダルビッシュ有 日本ハム時代から柔軟な発想力
日本ハム時代のダルビッシュの試合後の言葉を聞くのは楽しみだった。当時、報道陣の取材に応じる機会は少なかったが、試合後は比較的、詳細に話してくれた。その内容は驚くことばかりだった。 【写真】肩を組み合い笑顔で写真撮影に応じるダルと大谷 鮮明に覚えているのは、2010年5月1日の西武戦。当時の西武には中島(現中日)、中村剛ら強力な打者がそろっていた。約1カ月の短期間で3度目の対戦。「工夫せずにいけば打たれる」と、投球板の踏む位置をいつもの三塁側から一塁側に移して投球した。ひらめいたのは試合開始直前といい、いつもとは違う球筋で、西武打線を完封した。 当時は日本球界で無双状態。普通に投げても抑えた可能性は高い。シーズン中に投げ方を大きく変えるのはリスクが高いが、トップに君臨してもなお、変化を恐れず、進化を求めた。試合中に突如、横手投げに変えるのは通常運転で、ぶっつけ本番で新球を投げることもあった。そんなちょっとした〝遊び心〟の真意を聞くのは面白かった。 柔軟な発想は米大リーグ移籍後も生きた。データ重視の野球にいち早く対応。最先端のトレーニングを取り入れ、第一線で勝ち星を積み重ねた。 昨年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、若手にこれまでの経験や知識を惜しみなく伝えた。それ以上に「成長する姿勢を崩してはいけない」と、熱心に変化球の投げ方や調整方法を聞く姿が印象的だった。37歳となった現在も、進化ヘの意欲はとどまるところを知らない。(神田さやか)