ナマイキな態度には高電圧を流して「理解」を促そう!ロボットと対話するアドベンチャーゲーム『BatteryNote』はインモラルな好奇心の背中を押す、“癖”むき出しで懇切丁寧な作品だった。ちょっぴりダークネスな萌えとポップさのバランスが絶妙
ゲームでキルできないはずのNPCを攻撃するとき、何を考えているだろうか。何も考えず、手持ち無沙汰に攻撃していることもあるし、なにか反応が返ってくることを期待して攻撃してみることもある。突如の攻撃に驚く声や悲鳴が上がるばかりで、攻撃行為がゲームプレイになんのメリットをもたらさなくとも、どうしてか「やってみてしまう」という人も多いだろう。 『BatteryNote』画像・動画ギャラリー 『Battery Note』は、ゲームキャラクターへの攻撃こそが目的のひとつになっている作品と言えるだろう。バッテリーの寿命が迫るロボットを充電して会話を楽しみ、時には「高電圧スイッチ」で許容量を超えた充電をして、不遜な態度を制裁する──というのが主な内容だ。 本作における「攻撃」は、すでに勝ち目のない状態に置かれたロボット相手に、気まぐれに電流を流すというかなりインパクトあるものだ。スタートの時点ではロボットに一切の罪はない。だからこそ、プレイヤーにはいくつもの動機が必要になる。 アドベンチャーゲームである本作の目的は、「ストーリーを読破すること、ルートを全て回収すること」だろう。その建前が、プレイヤーの指を高電圧スイッチに伸ばさせる。『UNDERTALE』でGモード突入の条件を知っていながらも、実行に移した人間は少なくないだろう。物語の全容を掴むためなら、非道な行為だって仕方ない。ゲームなのだから。 だが、それだけだろうか。ロボットたちが生意気な態度で反抗してくるから、すぐそばでAIアシスタントが「高電圧を流していただけますか?」と囁いてくるから。いくつも用意された建前が、プレイヤーの抱く「どんな反応をするのか見てみたい」という欲望を優しく包み込み、手ほどきするかのように高電圧スイッチに誘う。 こんなこと、しちゃいけないんだろうな……と思いながらも、クリックする指を止められない。 というわけで、ちょっぴりダークネス、だけどポップな本作の魅力について、体験版でのプレイをもとに紹介していこう。 文/anymo ■インモラルな好奇心の背中を押す、いくつもの建前を用意した懇切丁寧な仕様 本作の主人公は、長いコールドスリープから覚め、記憶を失った「メカニックくずれ」。AIアシスタントがいうには、コールドスリープ前にはスクラップ置き場から拾ってきたロボットを充電して会話を楽しむことを日課としていたという。そうして、プレイヤーはAIアシスタントとともに「日課」であるロボットとの会話を開始することとなる。 本作ではジェシカ、デバインド、サーベリーの3台からひとつを選ぶことが可能。電源を繋いだら通常(+20%)、高電圧(+40%)、充電をやめる(-20%)のいずれかを選択し、左上に残されたバッテリー寿命の限り、会話を楽しむことができる。 先述の通り、本作のもっとも大きな特徴は「高電圧スイッチ」である。これを押すのは、“弱っている相手を興味本位で痛めつける”という明らかに一線を超えた行為だ。初見の段階ではスイッチをおすことをためらう方も多いだろう(意気揚々と押しまくる方もいるとは思うが)。しかし、そんなためらいを丁寧に排除し、プレイヤーをマッドな主人公へと没入させるのが「ジェシカ」だ。 本作には3台のロボットが登場するが、その中でももっとも生意気に見えるのはジェシカだろう。あまりに不遜な態度や主人公やAIアシスタントへの悪態は、スイッチを押させるだけの動機になり得る。 というか、ジェシカの反抗に腹を立てたAIアシスタントが高電圧スイッチを直接勧めてくる。「このボタンを押してみたい。でも自分の手で痛めつけるのはな……」と尻込みするプレイヤーに、建前を与えてくるのだ。 そうして葛藤の末に、プレイヤーはほぼすべからく一線を踏み越えることになる。そうして一度でもボタンを押してしまえば、他のロボットの反応も気になり始め、先ほどより幾分か軽くなった押し心地のボタンを連打し、その反応を楽しんでいる自分に気づくだろう。 プレイヤーの背中を押す仕組みがいくつもありながらも、「本当にスイッチを押しますか?」と最後の確認ダイアログが出るのもニクい演出だ。充電の際にはプレイヤーは紛れもなく自分の意思をもって、自ら決定してロボットたちに高電圧を流すのだ。 ■ロボットなのに精神攻撃も効きまくり。理想と現実のギャップに動揺するロボたちは超かわいい ロボットを追い詰めるのは、高電圧スイッチだけではない。 たった10ターンほどの会話の端々や、記憶ログを勝手にのぞいたAIアシスタントによる暴露でバックグラウンドが徐々に明らかになるのだが、このいずれもロボットたちのアイデンティティを大きく揺るがすものだ。そして、それらを無遠慮にぶつけられたロボットたちの動揺や意外な表情はどれも魅力的で、ダークネスな「萌え」で身悶えしそうになる。 人間がそうであるように、本作のロボットたちもまた理想を掲げている。お店に必要不可欠な人気ウェイター、誇り高き戦闘員みんなに愛される職場のマスコット。しかし、もしこの理想が叶っているのであれば、彼らはスクラップ置き場にいることはなかっただろう。 実際に真実を目の当たりにしたときの衝撃を体感してほしいため詳細は伏せるが、どのロボットもかなり切なくて、不憫で、……かわいい。「高電圧スイッチ」に興味を持つ筆者と同類の人間ならば、胸を締めつけられると同時に間違いなくドキドキが止まらなくなるだろう。 ■ウェイター、セキュリティ、軍事用。三ロボ三様なやりとりからこれまでの姿が見えてくる ここまでゲームの仕様について主に紹介してきたが、本作を彩るもっとも大きな要素は、3台のロボットたちだろう。 ダイナーのウェイターロボット・ジェシカ、 オフィスを監視するためのセキュリティロボット・サーベリー、軍事用に開発されたと思しき戦闘ロボット・デバインドR7の3台が登場し、それぞれ見た目も使命も異なる。 特に機械とは思えない「ちょっとスケベ」という記載があるサーベリーはかなり特異なロボットで、こちらを「ダンナ」と呼びうざったいほどに媚び、しきりにスキンシップを求める。どのロボットも気が強いが、サーベリーに関しては我の強さがどこか人間臭く、高電圧を流すのをもっとも躊躇った(流したが)。 冒頭で触れたジェシカは元気いっぱいな悪態が魅力的だし、デバインドのバックグラウンドにも驚かされた。三ロボ三様な「高電圧を流す建前」にも注目して、会話を楽しんでほしい。 また、体験版の範囲内だけでも感じた、BGMの良さについても記しておきたい。ロボットが喋り出すまでは無音という演出も素晴らしく、ロボたちが喋ると同時にそれぞれに用意された楽曲が流れ出し、ガレージが一気に賑やかになる。特にジェシカのBGMにはグラスの氷が溶けるような音が入っており、それぞれのロボ生(人生)を反映した楽曲であることが感じられる。 絵、開発、音楽をすべてひとりで手がける「人外愛」の深い72studio氏ならではの、 ちょっぴりダークネスな萌えとポップさのバランスが絶妙な本作。ロボたちとの会話では悲壮感よりも、「わっ、かわいそう♡かわいい♡」が勝つ、そんな独特のプレイ感をぜひ体感してほしい。 『Battery Note』はPC(Steam)向けに体験版を配信中。2024年に発売予定だ。
電ファミニコゲーマー:anymo
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