アーセナルに“2度目”の別れを告げたウィルシャー氏「『さよなら』ではない。『また会おう』だ」
ノリッジのコーチに就任することが正式発表された元イングランド代表MFジャック・ウィルシャー氏が、アーセナルを通して感謝のメッセージを公開した。 現在32歳のウィルシャー氏は、現役時代にアーセナルを中心に活躍。9歳の時にアーセナルのアカデミーに加入すると、その才能に磨きをかけ、2008年9月に行われたプレミアリーグ第4節のブラックバーン戦では、クラブ史上最年少となる16歳と256日でデビューを飾った。当時のアーセン・ヴェンゲル監督からも高く評価され、ボルトンへのレンタル移籍から帰還した2010-11シーズンからは主力に定着。2010年8月には18歳でイングランド代表デビューを飾り、2012-13シーズンからはアーセナルの背番号「10」を託されるなど、名実ともにクラブの中心選手に成長する。小柄ながら球際のバトルを厭わない姿勢、一級品のボールテクニック、数々のチャンスを生み出すプレービジョンなどを誇り、2010年代前半はアーセナルの“アイコン”として活躍を続けた。 その一方で、度重なる足首の負傷にも悩まされ、気が付くとアーセナルでの序列も低下。ピッチに立てば輝きを放ちながら、負傷によってパフォーマンスに陰りが見られるようになり、“ガラスの天才”とも称された。2016-17シーズンにはボーンマスへのレンタル移籍も経験しながら、2018年夏に退団するまで、アーセナルでは公式戦通算197試合出場14ゴール27アシストを記録。以降はウェストハム、ボーンマス、そしてデンマーク・スーペルリーガ(1部)のオーフスを渡り歩き、2022年7月に30歳の若さで現役引退を発表していた。 そんなウィルシャー氏は、現役引退の直後からアーセナルで指導者キャリアをスタート。もっとも、2022年2月にオーフス加入が決定するまで、半年間無所属となった期間にはアーセナルの練習に参加しており、選手としてのコンディション維持に努める傍らで、ミケル・アルテタ監督の下、指導者としての経験も積んでいた。2022年夏にアーセナルのU-18チームで監督に就任すると、1年目こそ南地区のリーグ戦で11位に沈んだものの、FAユースカップでは決勝へ進出。2年目となった昨季は、リーグ戦でも3位とランクアップさせることに成功する。今季のリーグ戦では、ここまで2勝3分と無敗で駆け抜けていた。 このような状況のなか、23日にはチャンピオンシップ(イングランド2部)に身を置くノリッジのトップチームでコーチに就任することが発表された。イギリス『アスレティック』など複数のメディアは、トップチームでの指導者キャリアを積みたいウィルシャー氏と、9月に入ってアシスタントコーチを引き抜かれたノリッジの思惑が一致した形と報道。ウィルシャー氏はノリッジを通して、「僕にとっては、印象的なクラブでの素晴らしい機会で、トップチームの環境で指導者としてのキャリアを積むのに適切なタイミングだった」などと語っていた。 今回のノリッジのコーチ就任を受けて、ウィルシャー氏はアーセナルを通してもコメントを発表。アーセナルというクラブへの愛情を伝えた上で、自身の率直な思いを明かした。 「U-18チームの監督として過ごしたすべての瞬間が、僕にとってかけがえのないものだった。エドゥ(トップチームのスポーツ・ディレクター)、ペア(・メルテザッカー/アカデミー部門のマネージャー)、ミケル(・アルテタ/トップチームの監督)、そしてアカデミーのすべての仲間たちに感謝の思いを伝えたい。僕が監督を務めていた期間、あらゆる形で献身的なサポートをしてくれて、本当にありがとう」 「既に誰もが知っていることだとは思うけど、アーセナルというクラブは僕という人間を語る上で欠かせない1つの要素なんだ。それはこれからも決して変わることはない。アーセナルという存在は、僕にとって本当に大切だ。しかし、今回のチャンスは、僕のトップチームにおける指導者キャリアを前進させてくれるもの。非常に適切なタイミングで話が届いたのも大きかった」 「アーセナルの選手やスタッフとは信じられないほど特別な絆で結ばれている。この2年半の間、僕らが一丸となって成し遂げた仕事についても、とても誇りに思っているよ。こんなにも素敵なグループの成長と進歩に関われたことは本当に光栄だったし、これからも遠くから見守り、必要があればサポートもしたい。アカデミーの選手たちにとっても、クラブにとっても、未来は輝きに満ちたものとなるだろう。僕が共に仕事をしてきた大切なグループは、これからも進歩し続けるだろうし、大きなことを成し遂げる可能性を秘めているからね」 「アーセナルのみんなには、僕の決断を理解し、尊重してくれたことに感謝したい。誰よりもこのクラブの発展を願っているよ。このクラブは常に僕の心のすぐそばにある。だから、今回の決断についても、僕の気持ちは『さよなら』ではない。『また会おう』だ」 また、アーセナルのアカデミー部門でマネージャーを務めるメルテザッカー氏も、次のようにコメントを発表している。 「過去2シーズンにジャックのコーチとして示してくれた成長は、本当に素晴らしいものだった。ジャックは、過去には選手として、その後はアカデミーの監督として、最高の形でアーセナルを代表してきた」 「ジャックは単に若い選手たちにとっての模範となっただけではない。高いレベルのフットボールにおいて求められるスキルを示し、最高の人間として振る舞うことも重要性も伝えてきた」 「もちろん、ジャックの退団は寂しいが、若き指導者である彼が、キャリアの次のステージに向けて一歩を踏み出す段階に差し掛かり、我々がそのサポートを積極的に果たせたことを誇りに思っている。我々は、ジャックと彼の家族がノリッジで幸せに暮らせることを祈っている。ここにいる彼の多くの友人たちは、彼が指導者としての道を歩み続ける間、密に連絡を取り合っていくことだろう」 なお、ウィルシャーの後任については、近日中に発表される予定だと伝えられている。
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