「ホラー漫画の神様」楳図かずおさん、ギャグ、SFと幅広く魅了 新作制作中で無念の訃報
ホラーやSF、ギャグなど、幅広いジャンルで奇才を発揮した漫画家の楳図かずおさんが死去した。楳図さん自身も独特な感性で人気を博し、漫画の枠にとらわれない活動でファンを魅了してきた。 【写真】死去した楳図かずおさん 指サインの「グワシ」でポーズ 楳図さんは小学4年の時から漫画を描き始め、高校3年でデビュー。少女漫画誌を中心にホラー漫画の連載を続けた。 細い線を重ねた密度の高い描き込みによって、迫力を出す独特の画風。昭和47年に小学生が文明の滅んだ未来にタイムスリップするサバイバルホラー漫画「漂流教室」が人気となり、50年に第20回小学館漫画賞を受賞した。フジテレビが平成14年に同作を原作としたドラマを放映している。楳図さんは26年には映画の初監督を務め、31年に文化庁長官表彰を受けるなど、芸術分野での幅広い活動で知られる。 「ホラー漫画の神様」といわれる一方、昭和51年に連載開始のギャグ漫画「まことちゃん」がヒット。主人公の幼稚園児のまことちゃんのシュールなギャグがさまざまな世代に受けた。指を折り曲げる「グワシ」の指サインは社会現象となった。 ■読者の驚きに全力 楳図さんはスポーツ紙のインタビューで「(簡単に物語ができる)『戦争、病気、貧乏』を描かない」と語っている。ホラーもギャグも奇想天外な着眼点や結末のオチを思いつく難しさが共通しているといい、読者を驚かすことに全力で挑戦していた。 私生活では、赤と白のボーダー模様に並々ならぬこだわりをみせた。楳図さんは産経新聞の取材に「子供のころ海賊にあこがれていた」と答えている。手塚治虫の「新宝島」に登場した海賊が赤白のボーダー姿だったという。30~40着以上のボーダーシャツを持っているといわれ、気が大きくなると線が太いものを着て、気が小さくなると幅が狭まっていくという。 東京・吉祥寺の自宅は外壁が赤白のボーダーで「まことちゃんハウス」と呼ばれ近隣住民やファンから愛されている。建設中は平成19年8月に、一部の近隣住民が建築の差し止めを求める仮処分を東京地方裁判所に申請するなどのトラブルが起きた。20年3月中旬に完成し、原告住民は請求内容を外壁の撤去などに変更したが、東京地裁は21年1月、住民の請求を棄却する判決を言い渡し、楳図さんが勝訴した。 楳図さんは令和4年からスタートした「楳図かずお大美術展-マンガと芸術の大転換点-」で、アクリル絵画101点による連作という形で27年ぶりの新作を発表。同展は10月まで金沢21世紀美術館で開催されていた。小学館集英社プロダクションが10月2日に、新作を制作中であることを発表していた中での訃報となった。(高木克聡)