モキュメンタリーはどう楽しめばいいか…作家・背筋が語る”怖さ”への向き合い方
昨今、大流行を見せているモキュメンタリーホラー。2021年にYouTubeで配信された雨穴氏の「変な家」をきっかけに、急速な広がりを見せた。 【閲覧注意】『進撃の巨人』の元ネタになったとも言われる衝撃事件 ヒットしたモキュメンタリーホラー小説『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)の作者である背筋氏に、この流行についての話を聞いた。同作は彼のデビュー作で、今年9月の時点で25万部を記録。また、2作目の『穢れた聖地巡礼について』(KADOKAWA)、3作目の『口に関するアンケート』(ポプラ社)も9月に刊行された。 前編記事作家・背筋から見た昨今の「モキュメンタリー・ブーム」…「嘘」とわかっていても怖いのはなぜか
“懐かしさ”のある怖さがポイント
2023年8月に発売され、現在でも書店では平積みで置かれており、話題を呼び続けている『近畿地方のある場所について』。 行方不明になってしまった(作中の)背筋さんの友人・小沢くんはオカルト雑誌編集者で、失踪前に近畿地方にある「●●●●●」という地域に関連する噂話や都市伝説、怪談などを取材し、雑誌にしようとしていた。小沢くんが集めていた情報が提示されていき、「●●●●●」についての謎に徐々に迫っていく、という話だ。 「物語の大筋については、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)にあったような怖い話をイメージしました。どこか懐かしい、そんな気持ちになってもらえたらと思っています。怖さに関しては怖いものというよりも不穏さを目指しました。はっきりとしたことは明言せず、平然と流れていく情報の中に変なものや違和感がある不穏さを感じてもらえたらと思います」 30代から40代くらいの人のなかには2ちゃんねるを青春期に見ていたという人も多いのではないだろうか。 「洒落にならないほど怖い話を集めてみないか(通称、洒落怖)」を彷彿とさせるような節も多く散りばめられていた。背筋さんは、映画「ノロイ」や漫画「後遺症ラジオ」、ゲームの「SIREN」のほか「オカルトクロニクル」や「ムー」といったオカルト雑誌、実録ルポに至るまで、さまざまな作品から着想を得ているという。 「いろんな人が語る、古今東西の怖い話を集めたキメラみたいな作品なのかもしれない」と振り返った。 今年9月3日に発売され、あっという間に重版された『穢れた聖地巡礼について』は『近畿地方のある場所について』とは異なり、モキュメンタリー作品ではないものの、テイストは『残穢』のように過去に起きたことを調査していくというもの。 「『穢れた聖地巡礼について』はモキュメンタリーにこだわらず、人に焦点を当てた作品になっています。3人の登場人物がいるのですが、それぞれ過去に何か問題や悩みを抱えていて、それぞれが“心霊”を通してどのように変わっていくのかというところが主軸になっています。 加えて、“心霊”や“恐怖”をコンテンツ化しておもしろがっていることってよく考えると怖いよね、というテーマも持っています。私もホラー好きのひとりとして、(ホラーを)面白がることの傲慢さや罪深さを自戒の念をこめて書きたかったんです」 本作はモキュメンタリーホラーではないものの、ホラーやオカルトを楽しむ人にとってはかなりリアリティのある作品となっている。詳しくはぜひ本作を読んで確認してみてほしい。