<高校野球>地元の野球熱高める 島根・平田 センバツ21世紀枠候補
3月23日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が今月25日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難条件克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。 【写真で振り返る歴代出場校】 ◇細部にこだわり、勝利目指す 新聞紙を丸めてカラーテープを巻き付けたバットに、模造紙に円を描いて作った的当てボード。先月下旬、平田の野球部員たちは地元幼稚園・保育園児向けの野球体験教室の準備を進めていた。 同校野球部は野球の普及活動に力を入れており、選手4人の「普及班」を中心に地元スポーツ少年団の小学生たちへの実技講習会などに取り組むほか、地元幼稚園・保育園児向けの野球体験教室を催している。今月20日に同校で開く野球体験教室には園児約70人が参加する予定で、昨年2月に開催した時より3倍以上増えた。 同校のある島根県出雲市は少子高齢化などのため「子供の野球離れ」が目立つ。普及班長の深津唯人(2年)は小学生時代に所属した軟式野球チームでの体験を「3年生の時は80人ほどいたが、6年生では半数になった」と明かす。同校の学級数はかつて1学年6クラスあったが、現在は4に減少。部員が普及活動に熱心なのは、競技人口減少の危機感を肌で感じているからだ。 地元で野球が注目されるには、1916年創立の県立伝統校である同校の成績向上も欠かせない。部員全29人が地元出身で、2017年就任のOBの植田悟監督(47)は「個人の能力では勝てない。弱者が勝つための野球を実践している」と強調する。16年夏に同市内の進学校の出雲を甲子園初出場に導いた経験も踏まえて「細部にこだわった野球」を掲げ、攻撃のサインだけで約50種類用意。「バントは球がバットに当たる角度と足の動きを徹底すれば、狙い通り転がせる」といい、練習ではボールを使わずにコースや球種によってバントの仕方を体で覚える「シャドーバント」を取り入れる。 昨秋の県大会では全5試合で21犠打を重ねて準優勝。中国大会は初戦敗退だったが、一回にセーフティーバントで敵失を誘うなど無安打で3点を先行し、持ち味を発揮した。 「長打は打てないので束になって戦う」と植田航主将(2年)。地元の野球熱を高めるためにも初の大舞台を目指す。【長宗拓弥】