世界ジオパークの伊豆半島、対立深まる観光地のメガソーラー開発
隣接する別荘地は土砂災害警戒区域
開発山地に隣接して別荘地帯が広がっており、背後に山の崖が迫る別荘地は、2014年に広島市北部で発生した土砂災害を受けて、2016年に静岡県の土砂災害警戒区域に指定されている。 別荘で暮らす住民にとって隣接山林の伐採、造成に対する不安は大きい。 「森林を伐採すると土砂災害が起きやすくなります。事業者の計画では、雨が降った時に水をためる大きなプールのような巨大な調整池を設置することになっていますが、調整池の水が溢れれば大きな被害が出てしまいます。実際、この辺の規模の小さな太陽光発電施設で、調整池の水が溢れ、土砂を巻き込んで海に流れるということが起きています。事業者の説明は不十分で、当初は住民への説明は必要ないという態度でした」と話し、事業者に対する不信感を露わにしている。 八幡野地区のメガソーラー開発は、2015年に伊東市に土地利用の事前申請が行われたことに始まる。山林を伐採、造成してメガソーラーを設置する計画に対し、伊豆で自然環境保護の取り組みをしているフランス人生物学者らのグループが生態系に大きな影響を与えるとして警鐘を鳴らしたことが反対運動の始まりのようだ。その後、開発計画に反対する団体が組織され、別荘を含む地元住民らが参加して大規模な反対運動へと発展している。
反対住民らは訴訟を準備
伊東市ではメガソーラーの設置を規制する条例を今年6月1日に施行。八幡野地区のメガソーラーについても規制対象とし、開発を認めない方針を示しているが、事業者側は、施行日以前に事業に着手しているとして条例による規制の対象にはならないとの考えを示し、事業を進めていくことを明らかにしている。 1ヘクタール以上の森林の伐採は森林法の林地開発許可制度の対象になることから、森林伐採には静岡県知事の許可が必要となる。静岡県森林審議会は4回にわたり審議を行い、このほど付帯意見を付けた上で開発を認める意見をまとめ川勝平太知事に答申、川勝知事がどのような判断を示すのか注目されている。 「反対運動は訴訟を視野に入れた取り組みへと重点が移りつつあります」と新たに組織された「伊豆高原メガソーラー訴訟を支援する会」代表の関川永子氏は話す。民事訴訟での工事差し止め請求や、行政訴訟を提起する方向で準備を進めているという。 一方、伊豆メガソーラーパーク合同会社の担当者は「林地開発の許可が出ればすみやかに着工したい」と話し、伊東市の条例に関しては「弁護士と協議しながら訴訟も含めて対応を検討していく」と話した。 メガソーラー開発をめぐる伊豆半島の対立は、今後、法廷闘争に向かう様相を見せており、事業者と開発に反対する住民との溝はますます大きくなっている。