<映画評>アカデミー賞作品賞を受賞『それでも夜は明ける』
第86回米アカデミー賞、作品賞など3部門を獲得した作品。主人公で実在の人物、ソロモン・ノーサップが発表した自伝『Twelve Years a Slave』を映像化している。1841年にワシントンD.C.で誘拐され、奴隷として南部に売られた自由黒人、ソロモン・ノーサップが、12年間に渡って奴隷として過ごし、再び自由を奪い返すまでの物語。目を背けたくなるようなアメリカの“負の歴史”が、生々しく描かれている。
過去に目にした黒人奴隷を扱う作品の中で、圧倒的な生々しさがあった。「奴隷根性」を植え付けられた黒人たちは、戦うことはもとより、騒動を起こさない、もしくは関わらない、というスタンスで日常を過ごしている。 ノーサップが不条理に追い込まれ、首をくくられ、木に吊るされてるシーンがある。その場に居合わせた黒人たちのほとんどは、ノーサップを助けようとするどころか、何も起こっていないよう振る舞っている。おそらく自分たちに飛び火しないよう、関わらないことが、彼らにとって身を守る方法だったのだろう。 とにかく生々しさは半端ではない。ノーサップをはじめ、描かれている奴隷たちの解放を願わずにはいられなくなり、また、フィクションではなく実話を描いていることに、大きなショックを受けてしまう。 この作品には、人気俳優のブラッド・ピットが出演している。重要な役割を果たすカナダ人大工の役を演じているが、その出番は、意外にもほんのわずかだった。実は、ブラッド・ピットはプロデューサーとしてこの作品に関わっており、この映画を成功させるため、さまざまなバックアップを行ったそうだ。 後味のすっきりする作品では決してないだろう。しかし、アメリカの負の歴史を、しっかりと描ききっている。歴史を知る上でも、一度、観るべき作品だろう。 ■公開情報 『それでも夜は明ける』 2014年3月7日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー 配給 ギャガ (C) 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. All Rights Reserved.