コンピューターへのデータ入力用メディアとしても使われた「紙テープ」(1900年代~):ロストメモリーズ
「紙テープ」は、さん孔テープとも呼ばれ、文字データなどを記録するメディアとして使われました。その名の通り紙でできていて、データの書き込みは物理的に穴を開けることで行ないます。 コンピューター用の紙テープの多くは25.4mm 紙テープが使われたのは、主に電気通信機用。これは、押されたキーの文字をデータ化し、専用回線を使って送信。受信側でデータを受け取り、元の文字にして印刷するという装置です。 最もシンプルなのは、タイプライターと同じくキーの入力ごとにリアルタイムに印刷するものでしょう。しかしこの方式では、文字転送レートの上限がキー入力の速度となってしまい、遅すぎます。 これに対し紙テープであれば、事前に文字を入力し、記録しておくことが可能。これを再生しながら送信すれば、理論上データ転送レートの上限で文字を送れるようになるわけです。また、何度も再利用できるため、同じ通信内容を別の送信先へと送るのにも便利です。 モールス信号と違ってオペレーターが張り付く必要がなく、しかも高速。さらに、受信したデータは誰もが読める文字として印刷されるため、非常に便利な方式でした。 このキー入力を紙テープに記録し、送信先で文字を印刷するという電気通信機は、1900年代から登場。初期は、紙テープに穴をあけるさん孔機、紙テープの読み取り機、印刷するプリンターと、機能ごとに装置が分離していました。 製造開発はモークラム社とクラインシュミット社が大手でしたが、そもそも、電気通信機を必要とする取引先が限られてしまうため、市場としては大きくありません。この2社は1924年に合併し、モークラム・クラインシュミット社となった後、1928年にテレタイプ社へと社名が変更されました。 大きな転機となったのは、1930年にAT&T社に買収され、製造部門となるウェスタン・エレクトリックの子会社となったことでしょう。AT&Tは1931年にTWX(TeletypeWriter eXchange)というサービスを開始。これは後のテレックスで、今まで専用回線による通信だったものを、交換機を使い、通信相手を選べるようにしたサービスです。これにより、多くの企業が導入しやすくなり、大きく発展。この送受信に使う電気通信端末のことを、テレタイプと呼ぶようになりました。 テレタイプの動作を雑にまとめると、文字をデータ化して送り、受け取ったデータを文字として印刷するというものです。つまり、データの送受信さえできるのであれば、通信相手はテレタイプである必要がありません。この部分に目を付けたのが、ベル研究所です。1940年に開発されたリレー式計算機の「Model I」では、入出力端末にテレタイプの改造品を採用し、入出力装置として活用しました。 本格的に使われるようになるのはもっと後になってからですが、これ以降、大型計算機やコンピューターのキー入力や文字出力に、テレタイプが使われることが増えました。ちなみに、Unixなどで標準入出力に使うデバイスがttyとなっていますが、これはteletypewriter、つまり、テレタイプに由来したものです。 ということで、かなり脱線気味の前置きが終わったところで、紙テープを見ていきましょう。