明らかになってきた資本主義と民主主義の「限界」、このディストピアでも「幸せを感じられる」生き方
■ 国民の怒りの背景はマイナンバーカードか 特に今回の自民党の裏金問題について、国民がものすごく怒っている背景の一つにはマイナンバーカードの導入があるのではないかと私は推測しています。マイナンバーカードを持つことを半ば強いられた国民は、収入や納税状況について行政側から丸裸にされつつあると感じています。頭では透明化が良いと思いつつ、本音のところでは、どんどんガラス張りにされ、多少の誤魔化しも許されなくなってきていることに不満も感じています。少し脱線はしますが、マイナンバーカードの普及の停滞にもそんな国民の偽らざる本音が見え隠れします。 その一方で政治家はパーティー券収入を裏金化し、その使途も細かくは問われない。やろうと思えば、政治団体ごとわが子に引き継いで、相続税ゼロで資産を相続させることもできる。もちろん地盤も引き継ぎますので、一握りの政治家一族の世襲化はどんどん常態化していく。 「俺たち国民のことを丸裸にしようとしておいて政治家は政治資金で裏金かよ」――この落差が国民の怒りに油を注いだのではないでしょうか。 民主主義社会がどんどん高度化するに従い、行政の効率化・公平化が図られようとしていますが、その過程で国民の情報はどんどん行政側に把握されやすくなっています。そこに国民は不安と不満を抱いているのではないでしょうか。 産業界でも似たような動きが広がっています。例えば、自動車産業の主流は、これからは単なるEVではなく、SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)になっていきそうです。簡単に言えばSDVはパソコンやスマホのように、搭載されたソフトウェアをどんどんアップデートしたり、好みのアプリをインストールしたりできるEVのことです。中国やアメリカに先行されている分野ではありますが、日本もこれを国家戦略としてメーカーとともに進めようとしています。産業にとって大事な取り組みではありますし、ユーザーにとっても便利な機能であることは間違いないのですが、一方でユーザーのEVの利用状況などの情報、EV利用にとどまらない様々なバイタルデータなどは、メーカーや行政に筒抜けになる可能性があります。