ゲーム会社が存続危ぶまれた愛媛の分校救う 教育支援で学科新設、生徒の募集枠倍増
愛媛県立松山南高砥部分校が企業と連携し、2025年度にゲームクリエーションコースを新設する。生徒数の減少で統合が取り沙汰されていたが、存続に道筋を付けた。危機を救ったのはゲーム開発や広告事業を手がけるオートクチュール(東京)。社長で松山市出身の中村晋矢(なかむら・しんや)さん(45)は「地方の学生が専門的な教育を受ける機会を残したい」と話す。(共同通信=熊木ひと美) 砥部分校は松山市の南に位置する砥部町にあり、県内で唯一デザイン科を置く単科校。県の伝統工芸品「砥部焼」を作るための電動ろくろや釜を用意し、デザインや美術の分野で専門性の高い学びを提供している。1学年の定員は40人だが、コース新設に合わせ2倍に増やし、全国から募集する。 中村さんは町と共に砥部焼の海外での認知度を高める過程で、砥部分校が他校に統合される構想を知った。デザイン科の出身者はオートクチュールでも活躍している。「無関係ではない」。存続に向け名乗りを上げた。
2023年8月下旬、分校内にサテライトオフィスを開設。砥部分校と協力してカリキュラムの作成を進めている。3年間でゲーム制作に関する技術を幅広く学んでもらい、コンテンツ業界で活躍できる人材を育てる。 他コースの生徒もゲーム制作に触れる機会をつくりたいと、部活動の支援にも力を入れる。「自分たちで会社を起業するなどして、作ったゲームを売るのも面白い」と中村さん。 将来は県内企業を巻き込み、生徒が協働して開発に貢献できる水準を目指す。分校で育てた人材が県内のIT企業などで活躍し、砥部町を含む県全体を盛り上げてくれることが、自社の利益にもつながると考えている。 少子化を背景に日本各地で県立高の統廃合が進んでいる。中村さんは「地域産業の担い手確保のためにも、砥部分校のように実用的な技術を教える専門学習の学校をなくしてはいけない」と強調する。