手数料自由化から25年…ネット証券は激しい消耗戦で業界再編が進む
新NISA(少額投資非課税制度)は凄まじい「商機」(ビジネスチャンス)を生み出している。2024年1月に開始されたこの制度では非課税投資枠が大幅に拡大された。証券各社の顧客獲得競争は激しさを増している。 【一覧】“戦国時代”真っただ中のネット証券は決算で明暗クッキリ 「新NISAの取引手数料を無料にすれば、一般投資家の多くは実質的に取引手数料無料で日本株も米国株も投資信託も買い付けが可能となる」 そう説明したのは松井証券の和里田社長(23年10月の決算説明会)。 実は、その直前に松井は業界に先駆けて新NISAの売買手数料無料化を宣言していた。新規参入顧客を一気に囲い込む戦略だ。 その動きに対抗し、SBI証券や楽天証券も新NISAの取引手数料無料に追随。ネット証券は激しい競合による「消耗戦」で、すでに再編成期に差し掛かっている。 マネックス証券(265万口座)はNTTドコモの実質連結子会社、auカブコム証券(175万口座)は三菱UFJ銀行の100%子会社として生き残りを図る。 いち早く手数料無料化に動いた松井証券(159万口座)は異色の歴史を持つ。他社はすべてベンチャー企業系だ。松井は1918(大正7)年創業、「金融ビッグバン」(手数料自由化、1999年)を機に旧来型証券からネット証券に「進化」を遂げている。その真価がいま再び問われている。 現在、取り組んでいるのは原点である顧客サービスの拡充だ。たとえば投資信託「信託報酬」全額を顧客にポイント還元している。25年5月にはJCBと提携しクレカ積み立てサービスを展開する。これにより投資信託での顧客への還元率は業界最高となる。 投資信託にフォーカスした新規顧客の獲得戦略を打ち出す松井証券が、“次の再編”に向けた台風の目になるかもしれない。