日銀の多角的レビューと非伝統的金融政策①:非伝統的金融政策とは何か
非伝統的金融政策が世界に広がる契機は金融危機
日本銀行がマイナス金利政策を解除する時期が近づいている。それは、2013年に導入された異例の金融緩和の一部を本格的に修正するものであるが、それにとどまらず、過去四半世紀続いた日本銀行の非伝統的金融政策を見直す起点となるだろう。 植田総裁にとって初回となる昨年の4月の金融政策決定会合で、日本銀行が今後、過去25年にわたる非伝統的金融政策の効果、副作用を検証するなどの「多角的レビュー」を行う考えが示されたが、その際に、改めて非伝統的金融政策とは何か?という点に注目が集まった。そこで以下では、非伝統的金融政策について改めて考えてみたい。 2008年に発生したグローバル金融危機(リーマンショック)という未曽有の事態を受けて、主要中央銀行は、従来用いられてきた伝統的な(プラスの領域での)短期政策金利の操作とは異なるという意味で、非伝統的政策と総称される手法を、まさに雪崩を打ったように導入していった。 その具体的な枠組みは、国債買入れ、その他リスク資産買入れ、フォワードガイダンス(短期政策金利の先行きの見通しや方針を示すこと)、マイナス金利政策、日本でのイールドカーブ・コントロール(長期金利操作)へと順次拡大されていったのである。 海外の文献では、以上のように紹介されることが一般的であるが、実際には非伝統的政策は、①1999年から2000年にかけて日本で実施された、「ゼロ金利政策」とゼロ金利制約のもとでの「時間軸効果政策」、②2001年から2006年に日本で実施された「量的緩和策」、の2つがその先駆であることを改めて強調しておきたい。 この日本で行われた非伝統的政策は、バブル経済の発生、不動産価格高騰への政策対応の失敗、金融不安の発生のもとで採用された日本独自の特殊な政策であると、長い間海外では解釈されてきた。しかしグローバル金融危機後は、こうした非伝統的政策がまさに主要各国で標準(スタンダード)となっていったのである。