日銀追加利上げ観測で10年社債スプレッド拡大、投資家の慎重姿勢映す
(ブルームバーグ): 早ければ今月中にも日本銀行が追加利上げを実施するとの観測が高まる中、社債市場では投資家の10年債に対する需要が減退し、新規発行時のスプレッド(上乗せ金利)が拡大している。
中国電力や東北電力の最近の起債でスプレッドが拡大するなど、発行頻度が高い企業を中心に資金調達コストの上昇が見られる。NECやKDDIも10年債の発行に厚めのプレミアムを支払った。野村不動産ホールディングスは市場の不安定さを理由に、予定していたグリーンボンド(環境債)で10年債の発行を見送った。
長期金利の指標となる10年国債利回りが今週再び1.1%に達し、2011年以来の高水準に並んだことから、金利上昇懸念が社債市場にも広がりつつある。今年初めに日銀がイールドカーブコントロール(長短金利操作)を撤廃して以来、10年社債は金利上昇圧力にさらされており、起債が殺到する中でこの年限での資金調達を目指す企業のコスト上昇に拍車をかけている。
SMBC日興証券の原田賢太郎チーフクレジットアナリストは、社債市場で金利の先高観やボラティリティーが高まり、10年ゾーンの需要が弱くなってきていると話す。4-6月の起債が多かった影響もあり、電力会社の10年ゾーンを中心にスプレッドがワイド化しているとも指摘した。
中国電が4日に起債した10年債の国債スプレッド(上乗せ金利)は53ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、5月下旬の起債時との単純比較で12bp拡大。東北電が同日に決めた10年債のスプレッドは52bpで、5月下旬の九州電力10年債の41bpを上回った。
ブルームバーグ指数によると円社債全体のスプレッドは2年ぶりの低水準である44bp付近で推移しており、10年社債のスプレッド上昇はこれと対照的だ。金利の先高観から起債を急ぐ動きが広がって、4-6月期の円建て社債発行額は記録的な規模となった。
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Ayai Tomisawa