他人が落としたおにぎりを息子が「ママ、食べられるよね?」元子役タレントが貧乏を脱しようと決意した瞬間
■他人が落としたおにぎりがきっかけで心を入れ替えた ── そんな過酷な経験をしてきたとは思えないほど、いまはほがらかで表情豊かですよね。最悪の状態から抜け出せたきっかけはあったのでしょうか? 中武さん:心を入れ替えるきっかけになった出来事があります。あるとき、子どもと一緒にスーパーへ行ったのですが、前を歩いていた人たちが買ったばかりのおにぎりを落としていったんです。あわてて声をかけたのですが、気づかずに去ってしまいました。
そうしたら息子が「ママ、これ食べれるよね?よかったね!」と、嬉しそうに言うんです。それから、スーパーの袋が落ちていると駆け寄って拾うようになってしまって。それを見て「私はどれだけ子どもにみじめな思いをさせてきたのだろう」と心底、自分が情けなくなりました。いままで明日のことしか考えられなかったけれど、それじゃダメだ、本気でここから抜け出して、子どもを幸せにしなくてはと決意しました。それが、昨年あたりの話です。
── わりと最近のことなのですね。 中武さん:家賃や光熱費、携帯料金など、いろいろ滞納していたので、そこから抜け出すのにかなり時間かかってしまったんです。ようやく最近になって、滞納分を払い終え、バイトをかけもちすることで、生活が少しずつ回り始めたところです。 ── よかったですね。ホッとしました…。その後、お子さんの様子はいかがですか? 中武さん:サバイバルのような生活をしていたころ、子どもを怒ってばかりいました。そのせいで、息子もだんだん無口になってしまって。でも、いまは暮らしが落ちついてきて、心に余裕ができたので、ようやく笑いあえるようになりました。ふたりでおちゃらけあうときに、すごく幸せを感じますね。
息子とは苦しいときを一緒に乗り越えた間柄なので、「親子」というより「同志」のような感覚があります。どん底生活を経験しているからか、息子は同世代よりも大人びているんです。過酷な状況で「大人になるしかなかったんだろう」と思うと、申し訳ない気持ちになりますね。私がぐったり疲れているときには、我慢しているのだろうなと感じるときも。だから、バイトの給料日に必ず息子が食べたいものを一緒に食べに行くようにしています。